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2010 長野県知事選

 8日投票の県知事選で、通常の投票所に出向くことが難しかったり、判断能力が低下したりしている高齢者や障害者らの投票をどうするか、福祉施設などで対応が分かれている。県選管に申請し指定を受けた施設では入所者が不在者投票できるが、入所者の重度化などを理由に不在者投票所を設けず、希望があれば通常の投票所に連れて行く指定施設も。どう投票の意思を確かめ、その行使を支援するか、施設側には戸惑いもある。
 2日、下伊那郡阿智村の特別養護老人ホーム阿智荘。投票管理者を務める所長の木下明文さん(54)らが立ち会い、入所者48人のうち、希望した車いすのお年寄りら5人が不在者投票をした。
 施設内に設けられた記載台に向かい、持参した選挙公報を見ながら投票用紙に記入。終わると封筒に入れて、「お願いします」と担当職員に手渡した。ある女性(86)は「投票は欠かしたことがない。選挙は大事」と話した。
 同荘入所者の要介護度(最高は5)は平均4・5。投票の意思を確認すると「もういい」と言う人がいたり、30年ほど前の記憶で候補者名を話す人もいるというが、木下さんは「投票したいとの思いを大事にしたい」と強調する。
 上田市の特養ともしびは、入所者の大半を認知症の症状がある人が占めるようになり、5年前に不在者投票をやめ、期日前投票所に車で送迎するようにした。指定施設の不在者投票では、記載台に候補者名を掲示することが公選法で認められないためだ。期日前投票所では、掲示された候補者名を入所者が指さし、投票所の補助者が代理投票できる。施設長の萓津公子さん(53)は「投票はするものと思って生きてきた人の思いを、こちらの勝手でつぶすことはできない」。
 一方、「入所者が重度化し、ここ1、2年は不在者投票所を設けていない」という指定施設もある。入所者に投票を希望するか聞いているが、「今は期日前も当日もほとんどない」という。
 佐久市の知的障害者支援施設緑の牧場学園は「利用者の一票を大切にする」として、「選挙権行使マニュアル」を2005年に策定。知事選告示を伝える新聞を施設内の掲示板に張り出すなどしているが、「分かりやすく政策を説明するのは難しい」と次長の広田典昭さん(46)。投票干渉と疑われないよう、気を付けているという。
 認知症の人や知的・精神障害者ら、判断能力が十分でない人が財産管理などのために利用する成年後見制度では、判断能力が全くない人が対象の「後見類型」になると、選挙権は失われる。日本成年後見法学会理事長の新井誠・筑波大法科大学院長(60)は、後見人がつくと一律に選挙権がはく奪されることに疑問を呈し、「残された能力の範囲内で投票してもらうことが大切だ」と指摘している。

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