The Shinano Mainichi Shimbun

信濃毎日新聞ニュース特集

メニュー

2014 長野県知事選

阿部県政2期目の船出(上) 7党相乗り、政党影響力

2014年08月12日(火)


民主党県連を訪れ、倉田竜彦幹事長(右)にあいさつする阿部守一氏=11日、長野市中御所

 10日の知事選で圧倒的な支持を得て再選された現職の阿部守一氏は、与野党7党の推薦を受け、県会でも6会派のうち5会派が事実上、支持するなど「少数与党」だった1期目とは対照的なスタートとなる。今後、知事はどう県政運営をしていくのか。2期目の船出を前に実像を探った。


     ◆


 「無党派層の票の80%以上の支持を得たのだから、あまり党派性に関係なく、リーダーシップを発揮して、しっかりやっていただきたい」


 開票から一夜明けた11日、県庁に近い長野市の民主党県連事務局。政党や団体、首長有志らでつくる支援組織「明日の長野県づくり推進会議」議長の藤原忠彦・南佐久郡川上村長(全国町村会長)らを伴って訪れた阿部氏に、倉田竜彦・県連幹事長(県議)は、やんわりとくぎを刺した。前回選で対立候補を支え、今回は阿部氏を支援した自民党を念頭に置いた発言だった。


 「一党一派に偏らず県民の声にしっかりと耳を傾けて頑張りたい」。阿部氏はにこやかな表情で、そう応じた。


 続いて阿部氏は道路を挟んで反対側の自民党県連へ。国会議員や県議ら幹部は不在だったが、阿部氏は事務局長らに礼を述べ、頭を下げた。


 阿部氏は今回、自民、民主、日本維新の会県総支部、公明、次世代、結い、社民の計7党から推薦を受けた。この日は、ほかに社民党の県連事務局にもあいさつに回った。午後には、推進会議の構想に携わり、自民党の阿部氏推薦への道筋を付けた石田治一郎・同党県連幹事長(県議)のもとへ。短時間の面会だったが、あらためて感謝の意を伝えた。


     ◇


 選挙期間中は党本部から応援を呼ばないなど政党色を抑え、阿部選対のまとまりを優先した各党。だが、当選後はそうした「足かせ」も外れる。


 「阿部氏との関係はより緊密になるだろう。われわれの政策が早く実現できるよう働き掛けていく」。自民党のベテラン県議の一人は、2012年12月の政権復帰前後からは「阿部氏とは特にやりづらくはなかった」と述べ、与党としての影響力も背景に意思疎通を図ってきたと説明。今後一層、党の主張を県政に反映させていく考えを示した。


 一方の民主党は、自民党の影響力拡大への警戒感を隠さない。「政党、各団体が一致して混迷の県政を安定の県政に切り替えた。そのことを重視した方がいい」。北沢俊美・県連代表(参院県区)は取材にそう述べ、県政の場を各党の勢力争いの場にすべきではないとの考えを強調する。


     ◇


 阿部氏再選に至るまでには政党、団体と阿部氏との間で水面下の綱引きもあった。自民党本部は推薦を決める際、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更に否定的な見解を示していた阿部氏の発言を点検。党県連を通じて県会答弁の内容などの提出を求め、阿部氏側は応じた。


 阿部氏は自民党の安倍晋三総裁(首相)から推薦証を受け取る6日前の6月10日、都内で同党の石破茂幹事長と面会。石破氏は「党の政策にも理解を示してもらわねばならない」と求めた。阿部氏はこれまで示してきた解釈変更に慎重な姿勢は撤回しなかったとされる。ただ、発言は「国民の納得と理解がしっかり得られる形で、国が進むべき方向は決められるべきだ」などと微妙に変化していった。


 その2日後、阿部氏は民主党最大の支持団体、連合長野との政策協定締結に臨んだ。だが、直前で「連合の政治方針を尊重する」といった項目に阿部氏側が難色を示した。政治方針には、自衛隊は専守防衛が前提、今後のあり方は縮小の方向を指向―といった内容が含まれていた。内容まで踏み込んで懸念したかは不明だが、最終的に協定は一部項目を外して調印された。


 阿部県政の2期目には、安倍政権が進める集団的自衛権行使に向けた関連法の改正、環太平洋連携協定(TPP)など、地方にとって関係の深い課題が山積する。再選を経た阿部氏の国への向き合い方が注目点になる。