TOP2011年03月県伝統工芸品「桐下駄」唯一の職人 工房被災

 県の伝統的工芸品となっている栄村の桐下駄(きりげた)を作るただ一人の職人、山岸忠治さん(80)=横倉=の自宅と工房が、12日未明の県北部地震で傾くなどの大きな被害を受けた。建物はともに応急危険度判定で「危険」とされ、製品や材料、道具が残る工房には入ろうにも入ることができない。製作再開の見通しが全く立たない中、山岸さんは「今は白紙」と言葉少なだ。

 工房近くの自宅で妻と二人で暮らす山岸さんは地震当日、大きな揺れで目が覚めた。自宅は家具などが倒れ、庭の石垣が崩れた。避難所に急ぐ途中で見た木造2階建ての工房は傾き、窓枠は外れていた。村の避難指示を受け、その日のうちに長野市に住む子どもの家に身を寄せた。

 桐下駄製造は明治末期、栄村や隣接する新潟県津南町で冬の副業として始まった。昭和10年代後半に通年生産が定着した。1983(昭和58)年に県伝統的工芸品に指定されたが、高齢化に伴い職人の数は減少していった。90年代半ばには職人らの協同組合が解散したが、伝統工芸を守ってほしい-という当時の村長らの思いを受けて、その後は山岸さんが一人で作り続けてきた。

 強度があるという地元のキリを使った下駄には愛用者も多く、今も県内外から注文があるという。傾いた工房の中には完成品が200足ほどあり、山岸さんは「欲しいと言ってくださる方々のためにも、全てを取り出したい」。重機で建物を支えながら完成品だけでも運び出せないか、建物を所有する村役場と検討を始めた。

 一方、山岸さんは、子どもたちから今回の地震を機に同居を勧められているという。「(先のことは)私一人で決められることではない。職人のOBや関係者の考えが大事」と山岸さん。「結論を出すまでにはまだ時間がかかる」と話している。

2011年3月27日掲載

災害用掲示板(安否確認)