初の五輪代表を狙う荒井広宙=2月の日本選手権20キロ(神戸市)

リオへの道・信州から=男子50キロ競歩・荒井広宙 4年前の悔しさばねに

201604/12

 リオデジャネイロ五輪代表最終選考会を兼ねた日本選手権50キロ競歩は17日、石川県輪島市で行われる。県勢は昨年の世界選手権4位の荒井広宙(自衛隊・中野実高―福井工大出)が残り1枠の代表入りを目指して出場する。
 昨夏の世界選手権で4位入賞を果たし、銅メダルを獲得した同僚の谷井孝行(自衛隊)とともに一躍、脚光を浴びた。「五輪本番でも」と高まる周囲の期待をよそに、荒井はマイペースを貫く。「自分のできる練習を確実に積み重ねていくことが大切」。まさに一歩一歩の努力を積み重ねて力を伸ばしてきた。
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 その言葉の意味を痛感したのは4年前のロンドン五輪最終選考会となった日本選手権だ。大学入学後、急成長して前年の世界選手権に初出場していた荒井は、代表有力候補の一人だったが6位と惨敗。「序盤のハイペースに対応できなかったこともあるけど、それ以上に疲労がピークの状態のまま選考会に臨み、体が重かった」と明かす。
 実は当時の荒井は、小松短大の内田隆幸監督に指導は受けていたものの、半ば孤独な戦いで五輪を目指していた。「監督には午前中だけ練習を見てもらうスタイル。午後は独りで練習をするんですけど、五輪を意識し過ぎたり、谷井さんとか周囲の人が力を付けたりしたこともあって、無意識に練習量が増えていた」と振り返る。さらに、選考会の前年に、下宿先で食事の面倒を見てくれた地元の人が病で倒れた。突然の自炊生活で、栄養面の知識もないまま、食事が偏り、貧血に。悪循環に陥った中での五輪選考会だった。
 「強くなるためには独りでは限界がある」。危機感を抱いた荒井は2013年、誘いのあった自衛隊へ入ることを決断した。朝霞駐屯地(東京)の敷地内には陸上専門のトラック、ロードのコースがある上、栄養面が考えられた食事、フォームを分析する機器などがそろう充実した環境。さらに、翌年に谷井が自衛隊に入隊したことが、荒井にとって大きかった。
 「僕はそれまで練習で長い距離を歩く意識が強かったけど、谷井さんは距離にこだわらない。疲労があると感じれば練習メニューを軽くする。以前は練習をやり過ぎて調子が上がらないこともあったけど、質の高い練習を継続的にできるようになった」。谷井と互いに鍛え合いながら、地道な練習を重ね、14年の全日本高畠大会は3時間40分34秒の日本歴代3位(当時)の記録で優勝し、昨夏の世界選手権で飛躍を遂げた。
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 「いきなり世界で活躍はできない。身の丈にあった練習をやり続ける大切さをこの4年間で学んだ」。五輪を懸けた最後の戦いは4年前と同じ日本選手権。「自己ベストはもちろん、日本記録を狙って、五輪代表をつかみたい」。穏やかに語るその表情には、積み上げてきた確かな自信が感じられた。