初の五輪に臨む荒井広宙=2月、日本選手権20キロ(神戸市)

荒井、貪欲という才能 19日、男子競歩50キロ

201608/19

 陸上の男子50キロ競歩は19日(日本時間19日夜)に行われる。県勢は昨年の世界選手権で4位に入った荒井広宙(自衛隊・中野実高―福井工大出)が出場。自らの才能を「並」と語る28歳は先輩、指導者、ライバルから貪欲に技術を吸収して表彰台を狙う逸材へと成長した。
 最初の出会いは中野実高の1学年先輩で20キロ競歩代表の藤沢勇(28)=ALSOK・山梨学院大出=だ。3年生の藤沢が全国高校総体で4位に入る姿を見た荒井は「衝撃を受けた。それまで自分には目標がなかったけれど、これだと思った」と長距離から競歩に転向した。
 この人だと決めると、とことん傾倒するのが荒井。藤沢は「荒井のことはあまり意識していなかった」というが、荒井は「(藤沢)勇先輩のように努力すれば全国大会で戦える」と必死に背中を追った。当時、中野実高陸上部顧問だった荻原信幸・上田東高陸上部監督(38)は「もう"フジサワ教"のようだった」と振り返る。
 高校時代は全国大会はおろか北信越大会すら出場できなかった荒井。「納得できる結果は何も残せていなかった。結果はどうあれ、4年間、自分のやれる精いっぱいの努力をしてみよう」と福井工大入学後も競技を続けた。
 そこで次の大きな出会いがあった。男子20キロ競歩の世界記録保持者の鈴木雄介(富士通)を育てた小松短大(石川県小松市)の内田隆幸監督(70)だ。荒井は、内田監督が開いた合宿にたまたま誘われて参加すると、「すごく熱意があった。教えてもらいたいと思った」。別の大学にもかかわらず、直訴して指導を仰ぐようになると、2年秋からは毎日、福井市から小松市まで電車で通って指導を受けた。ついには「この際、引っ越してしまえ」と小松市内に移住して、内田監督から歩型の基礎を学んだ。
 3年生の時に50キロに軸足を据えてからは、歩く度に自己新記録を連発。卒業後の社会人1年目には世界選手権に出場するなど一気にトップ選手の仲間入りを果たした。この4年間は、同じ自衛隊所属で、昨年の世界選手権銅メダリストの谷井孝行(33)に教えを請い、練習方法や体調管理などの方法を吸収し、こつこつ積み上げた努力で念願の五輪代表を射止めた。
 根底にあるのは、高校時代から抱き続ける「自分は並の選手」の意識だ。代表合宿に参加すると「自分より練習量が少ない若手選手がすごいスピードで歩く。自分とは素質が違う」と今でも驚くという。「でも才能が並だからこそ、歩型を固める努力や食事の取り方などいろいろ考えるようになった。その意味で、自分は並で良かった」。謙虚な姿勢で日本競歩界初の五輪メダルを目指す。