信濃毎日新聞ニュース特集

2016 参院選

改選1、激戦県区は民進 「改憲阻止」野党共闘結実

2016年07月11日(月)

初当選を果たし万歳して喜ぶ杉尾秀哉氏=10日午後9時27分、長野市内のホテル

 全国32の改選1人区を象徴する与野党対決となった長野県区は、民進、共産、社民3党による「野党共闘」が勝利した。3党の連携は必ずしも順調ではなかったが、安倍政権による憲法改正阻止をそろって訴える戦術が有権者に響き、民進党新人杉尾秀哉氏(58)の当選に結び付いた。敗れた自民党の県区議員は非改選の1人だけとなり、連立政権を組む公明党との関係にも影を落とす結果に。与野党の明暗は分かれた。
 「歴史的野党共闘が実り、その果実を万感の思いでかみしめている」。民進党県連代表の北沢俊美氏(参院県区)は、10日夜、長野市の祝勝会場でこうあいさつした。周囲には共産党県委員会の鮎沢聡委員長、社民党県連の竹内久幸代表らが並んだ。総合選対本部長の羽田雄一郎氏(同)は「自公政権に勝つには市民の皆さんが『野党が一つにならなければ勝てないぞ』と言い、リベラルな県民が結集した」と強調した。
 県区は、昨年の参院選挙制度改革で改選定数が2から1に減り、自民、旧民主両党が長年議席を分け合う構図が崩れた。「自民1強」と言われる政治状況に危機感を強めた共産党は、昨年9月の安全保障関連法の成立後、野党共闘の方針を表明。今期限りで引退する北沢氏は自身の後継者選びと並行し、共産の構想に自ら乗り、水面下の交渉を続けた。
 年明けの1月、元ニュースキャスターで知名度に期待できる杉尾氏が、北沢氏の後継として立候補を表明。翌2月には共産、社民3党との共闘合意にこぎ着けた。2012年衆院選で政権を転落して以降、旧民主の支持基盤固めは思うように進んでいなかった。候補の一本化を確実にする一方、安保関連法などに反対する市民らとの連携も深め、支持の裾野を広げる狙いがあった。共産は擁立予定だった新人を取り下げ、組織を挙げて杉尾氏を支援した。
 13年前回選県区の旧民主、共産の候補の合計得票は44万9千票余で、自民候補の36万5千票余を大きく上回った。共闘の実現により、野党側は優位に立ったとみられた。
 だが共闘に伴うひずみも表面化した。民進の支持団体・連合長野内には、共産との連携に異論がくすぶり続け、野党共闘の街頭活動に連合側が出席しないこともあった。保守票離れを懸念する民進党国会議員もいた。与党側は、安倍晋三首相(自民党総裁)や自公の幹部級を相次いで県内に投入し、攻勢を強め、選挙戦は与野党が一歩も譲らない展開となった。
 野党側は、安倍政権による改憲反対、安保法反対に的を絞ることで結束を守った。北沢氏は「昨年の安保法制の採決強行が有権者の意識の中にある。そこに火を付けることができた」と勝因を分析する。鮎沢委員長も「野党と市民が団結すれば政治は変えられるとの希望を示せた。安倍政権で壊された民主政治の土台を取り戻す、ここからがスタートだ」とする。
 一方の自民は選挙戦で、経済政策アベノミクスの継続を主張。だが地方への効果を実感していない有権者は少なくなく、十分に浸透しなかった。野党側の改憲批判を「争点ではない」とかわす姿勢や、杉尾氏への個人攻撃ともとれる街頭演説は逆効果だったとの見方もある。
 今後の焦点は、野党共闘の行方だ。野党3党は「安倍政権による改憲阻止」で一致したものの、与党側の指摘通り、安保政策などを巡って政策や主張の違いを抱える。政権選択となる次期衆院選に向けて、さらなる政策のすり合わせが成り立つのか。足元の県会には3党の県議がいるものの、連携して県政に臨む動きにはなっていない。3党の共闘の真価がこれから問われることになる。