信濃毎日新聞ニュース特集

2017衆院選

主権者教育、追い付かず 選管や高校、突然の解散で

2017年10月04日(水)

選管の依頼を受けて「出前授業」を行っている「STAP」のメンバー。急な選挙の対応に追われている=長野市の信州大教育学部

 国政選挙で昨年の参院選に続き「18歳選挙権」が適用される衆院選の10日の公示まで1週間を切った。県選挙管理委員会が本年度、県内の高校などで行った選挙講座や模擬投票などの「出前授業」は4校にとどまり、昨年度の計26校を大きく下回っている。主権者教育の「下火」もうかがわせる状況下、突然の衆院解散に主権者教育を担う各地の選管や高校は慌て気味。準備が間に合わず、模擬投票などを見送ったり、教育内容を簡略化したりする所もある。関係者からは、恒常的な主権者教育の必要性を指摘する声が上がっている。
   ◇
 県選管の出前授業は、高校などからの要望を受けて行っている。出前授業の急減について県選管は、初めて18歳選挙権が適用された参院選があった昨年とは異なり、あらかじめ予定された国政選挙がなく、注目度が低下していたとの見方だ。衆院解散で主権者教育への関心が一気に高まったが、解散から投開票まで24日間の短期決戦で選挙事務に追われており、今から出前授業を行うのは難しいという。「学校側には理解いただいている」とする。
 市町村選管も状況は同じだ。衆院選への出前授業について、小諸市選管は「段取りができない」。昨夏は市内全3高校で模擬投票などを展開した塩尻市選管も、「急に決まったので各校から依頼はない。選管も手が回らない」。
 飯田市選管では今回、高校生を投票所の事務従事者に採用することを見送った。過去、「若年層の投票意識を高めよう」と積極採用してきたが、担当者は「募集をかける時間的余裕がない。本当は採用したいが...」と残念がる。「日頃から主権者教育を進めたい考えはあるが、やはり選挙の時でないと、機運が高まらない。学校側との調整が必要になっている」と話した。
 一方、長野市選管は、任期満了に伴う長野市長選(22日告示、29日投開票)に向け、信州大の学生サークル「信州投票率上げようプロジェクト(STAP)」と協力。17日には、架空の市長選で学生が扮(ふん)する候補者の訴えを比べる模擬投票を、県長野養護学校(長野市)で行う予定だ。
 STAPは昨夏の参院選を前に設立。市選管と協力して出前授業を展開した。今年は長野市長選に向けて入念に準備していたが、突然の衆院選で、出前授業の依頼が県内の複数の高校から寄せられ、その対応にも追われている。段取りを確認した9月29日のミーティングでは、「今回は深い話までは難しそうだ」との声も上がった。代表の中村祐斗さん(21)は「本来ならバタバタしないで長期的に取り組んでいきたい。今回はできることをやろうと思う」と話した。
   ◇
 学校現場からは、主権者教育の出遅れを認める声が上がる。
 昨年は参院選を前に3年生が模擬投票をした塩尻志学館高校(塩尻市)は、「いきなり対応するのは難しく、具体的な予定はない」。衆院選では、模試や推薦入試と重なる場合に期日前投票を促すといった対応にとどまる予定だ。
 県林業大学校(木曽郡木曽町)は「日程が分かったのが遅かったので、授業では扱えない」。信州木曽看護専門学校(同)も「時間的に今回は無理」とする。
 選挙準備に追われる選管の都合もあって、主権者教育の計画を見直す所もある。2015年から3年生が模擬投票を毎年行ってきた松本美須々ケ丘高校(松本市)は、今月中旬に行う予定だった模擬投票を見送り、投票方法などを学ぶ内容に変更する方針だ。選挙期間中は「伝える内容や表現の中立性を保つのが難しい」のも理由という。
 一方、岡谷東高校(岡谷市)は3年の現代社会で今回の衆院選を取り上げる予定で、担当の桜井大然(たいぜん)教諭(30)は「3年生の半数が選挙権のある18歳。公約が出そろった段階で教えていきたい」と話す。上田西高校(上田市)は昨夏の参院選と同様、3年生を対象に新聞やネットで候補者の情報を集める授業を行い、投開票日直前の20日に、3区の衆院選候補者を対象とした模擬投票をする予定だ。
 学校によって主権者教育の度合いに差が出る状況。岡谷市のある高校の教諭は「(選挙の)直前に伝える情報が投票行動に影響を与える可能性もある。普段から選挙について教えることが大切ではないか」。長野市選管の担当者は「主権者教育は、選挙前に関心を高めてもらうための『啓発活動』とは異なる。選挙の有無に関わらず地道に取り組むべきだ」とする。
 辰野高校(上伊那郡辰野町)など県内の高校教員を長年務め、主権者教育などの著書がある宮下与兵衛さん(64)=首都大学東京特任教授=は、選挙権を持ち、最初の選挙の投票に行った人はその後の選挙でも投票に行き、行かなかった人はその後も行かない傾向があると指摘。「18歳を迎えた高校3年生にはとても大事な選挙。社会や公民の時間でぜひ取り組んでほしい」としている。


長野県開票速報  
小選挙区

全国の開票速報

立候補者一覧

月別アーカイブ