怪しいTV欄

2018.5/06

南北首脳会談、日本のテレビは...

おじさん二人が手をつないで、幅50センチの少し大きめの敷石を越える。それは一瞬の関心すらひかない場面のはずですが、その敷石が北朝鮮と韓国の軍事境界線で、二人が朝鮮労働党委員長と大統領ならば、歴史に残る光景です。
 今回の南北首脳会談を目前に、終戦宣言もありうると韓国側からの報道があり、落ち着かない気持ちで迎えた、当日。NHKの中継を見守りました。

 当然ながら、そこで繰り広げられるのはパフォーマンスです。何をするか、どういう姿をカメラに披露するのか。首脳会談であれば、両者の間で入念な打ち合わせが行われていて、しかるべき。それぞれが用意した動き、発言もあるでしょう。今回はどうやら金委員長が、北から南へ境界線を越えた後に、文大統領を北へ誘ってみせることを考えていたようです。

 その姿を世界に発信し、歴史に残そうと考えた。二人は、そして両国の政府は映像がメッセージになると心得ているわけです。となれば、それを日本のテレビがどう伝えるか。

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 朝の9時半。ワイドショーや情報番組の時間です。そうした番組はこれまで、北朝鮮や韓国を頻繁に取り上げてきました。韓国については、政治だけでなく、ロッテや大韓航空などのスキャンダルにたくさんの時間を割いています。

 北朝鮮については、2000年代の初めから、面白おかしく北朝鮮の政治体制や国民の暮らしぶりを扱うことも増えました。1993年にテリー伊藤の「お笑い北朝鮮」が出版されてから、深夜などにじわじわと「お笑い」目線で北朝鮮を扱う番組が出てきて、日本テレビの深夜番組「ブラックワイドショー」でそれが定番の「ネタ」になったあたりが分岐点でした。

 ウケる「ネタ」として認知され、「ブラック」がつかないワイドショーも扱うようになり、一時は夕方の情報ワイドにも頻繁に登場。時期を選ばず放送できる、いわば「ひまネタ」として重宝がられていました。しかし昨年あたりから「ネタ」扱いが減って、「北朝鮮の脅威」が大きく取り上げられるように。

 いずれにしろ、北朝鮮も韓国も、ワイドショーや情報番組にとっては重要な素材です。視聴率もそれなりにとれてきたということでしょう。

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 今回はしかも、放送時間中。さぞや大特集になるかと思いましたが、そうではありませんでした。当日はNHKの中継と被(かぶ)ってしまうとはいえ、ふだんはあんなに熱心に扱っているのに。不思議です。

 そして、その中継番組。2時間の枠をとって放送はしているものの、番組は終始、いぶかしげに進行。

 一番わかりやすかったのは、過去の南北会談から今回の会談までの経緯をまとめたVTRをふる、アナウンサーのこのコメント。「非核化に向けての合意が結ばれては、反故(ほご)にされてきた経緯があります」

 VTRは北朝鮮の非核化に焦点を絞り、90年代初めに核兵器開発が表面化したあたりから語り起こしています。南北会談なのに、終戦宣言もありうると事前に伝えられているのに、朝鮮戦争の始まりなどにはまったく触れず。これまた、不思議な番組でした。