介護のあした カット

国の施策・動向
「介護のあした」単行本に

第1部 二つの結末
第2部 「先進地」泰阜からの問い
 ぬくもりの家 グループホームを訪ねて
第3部 競争の時代の波間に
第4部 嫁の訴え
第5部 人として生活者として
第6部 足元から一歩

カメラで追う
励ます
「ともしび」
リハビリ
泰阜村の杉山さん
茶の間でおしゃべり
ぬくもりの家
垣根を越える交流
「ふれあいの里」

 「介護のあした」を探る道のりは、二つの事件の軌跡をたどることから始まった。

 周囲の手を拒み続けた末に母親の命を絶った70歳間近の元銀行員、痴ほうの妻と無理心中した80歳近い農村の男性。いずれも、戦前、戦後を純粋に生き抜いたがゆえに、旧来の価値観に縛られていたことが悲劇を招いた。

 その連載中にある読者からファクスが届いた。痴ほうが始まった入院中の母、一人暮らしの父。これから始まる「介護戦争」にブラックホールに吸い込まれるような不安を感じているという女性からだった。「暗い暗いこの連載をもうやめて、と思いながら読み続けた」とも書いてあった。

 半年後、電話の向こうの女性の声は明るかった。「父が記事を読んで、福祉サービスを受け入れてくれるようになりました。家族がいくら説得してもだめだったのに…。入院していた母も退院できて、今は幸せです。この時間が少しでも長く続いてほしい」

 介護を社会全体で支え合おうと、介護保険制度が来年4月にスタートする。だが、制度だけ整えても、社会や個人の意識や価値観(介護観)が変わらない限り、「介護のあした」は切り開けない。

 時代は今、経済優先の競争社会に一段と傾斜していくのか、人間優先の共生社会に向かうのか、大きな分岐点にある。経済優先の論理は、介護をますます片隅に追いやることになりかねない。アメリカでは高齢者への差別(エイジズム)が深刻化している。

 目の前に広がる超高齢社会は、介護が必要な老いへの覚悟をだれもが迫られる。一人ひとりが意識や暮らしの片隅に追いやっていた「老い」を真ん中に引き戻し、自分の問題として考え、かかわる。手間がかかるけれど、ゆっくり向き合ってみる。そんな足元から「介護のあした」への一歩を踏み出したい。

 (この連載は小市昭夫、太田康夫、畑谷史代、向井紀文記者、写真は毛利英俊、宮坂雅紀記者が担当しました)

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