表彰式

考える力、育てよう

 第6回中学生新聞スクラップ作品コンクール(信濃毎日新聞社、信濃毎日新聞販売店会主催)は、県内29校から過去最多の1139点の応募がありました。事前審査を通過した108点を、切り口やまとめ方の分かりやすさなどを基準に審査しました。優秀賞10点、奨励賞20点、特別賞7点を選びました。尖閣諸島や竹島をめぐる中国、韓国などとの関係、いじめなど、中学生が選んだテーマからは、私たちがまさに直面している問題が浮き彫りになります。写真が訴える力をうまく引き出した作品は見応えがあります。


優秀賞

守ろう水資源 活かそう私たちの水 飯田市・飯田東中3年 宮沢 茉夕さん
急激悪化!獣食害

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水不足の映像を見て

「アフリカなどの発展途上国の人たちが水不足で困っている映像を見て、日本の水資源の状況を調べてみようと思いました。県内で水源を守る活動をしている団体や小水力発電の事例などについてまとめました。水は当たり前のものとして見てきたけれど、有効に利用して、守ることが大切だと分かりました。飯田市でも小水力発電の導入を目指す取り組みがあります。時間や費用がかかるけれど、取り組みが広がってほしいです」

 

中川さんのひとこと

 水資源を守る努力や小水力発電などを探りました。水は国民共有の財産とし、関心を持つよう訴えています。

広がる信州の再生可能エネルギー 高森町・高森中2年 椚谷 和久さん
長野県の学校の今

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長野県に適している

「一昨年、祖父母の自宅の屋根に設置された太陽光発電パネルに興味があったのと、脱原発などに関する新聞記事が増えていることから、自然エネルギーの活用について調べてみました。太陽光や水力、地熱による発電についてまとめ、そのメリットなどを説明しました。自然エネルギーの活用は自然が豊かな長野県に適していると思います。もっと地域の自然エネルギーに関心を持っていくべきだと思います」

 

中川さんのひとこと

再生可能エネルギーが長野県に「適する」「必要」「考える」の視点で捉えています。見出しの色が引きつけます。


どうする?領土問題 平和的解決をめざせ!! 
今、日本が試されている!!
佐久市・野沢中3年 臼田 朋未さん
あなたはどう思う?脱原発社会実現をめざして

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時間たつほど複雑に

「新聞の1面にも載り、私たちの将来に関わる大変な問題だと思い、竹島、尖閣、北方領土に関する記事を集めました。調べてみると、何十年も前からの歴史が関係していて、興味深かったです。多角的に捉えようと、日本の首相や韓国の大統領だけでなく、五輪選手などの反応の記事も選んで載せました。領土問題は、時間がたつほど、どんどん複雑になっていきます。先延ばしにしないで、いま解決してほしいと思います」

中川さんのひとこと

竹島や尖閣諸島の問題を平和的に解決してほしいという作者の思いが伝わります。世界的な視点で見ています。

女子バレーボール〜28年ぶりのメダル!〜 須坂市・墨坂中2年 宮本 莉乃さん
世界を揺るがす3.11東日本大震災

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銅への道のり順番に

「自分も今、バレーボール部で副キャプテンをやっています。日本代表の活躍を見て、自分たちも粘り強い試合をしたいと思いました。作品は、ロンドン五輪の予選リーグから、韓国との3位決定戦までを順番に並べて、銅メダル獲得までの道のりが分かりやすいように工夫しました。写真が大きく使われていて、試合の雰囲気が伝わりやすい記事を選んでいます。それぞれの試合を見て自分が感じたことも書き添えました」

中川さんのひとこと

自分が取り組んでいるバレーボールを、ロンドン五輪での日本選手の活躍と重ねています。コメントが丁寧です。




裁判員制度〜正義はどうあるべきか〜長野市・長野日大中3年 風間 葵衣さん
節電が日本を救う第一歩

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制度の矛盾を感じた

「施行3年がたった裁判員制度。『見直し』に関する記事がなぜこんなに多いのか、疑問に思いました。家に届く新聞以外の記事もスクラップして分かったのは、守秘義務を重荷に感じる裁判員がいるという問題点。この制度は『開かれた司法』を目指しているのに、矛盾していると思いました。夜中まで作業した日もありました。グラフ付きの記事や目を引く見出しの記事をたくさん使い、理解しやすいように工夫しました」

中川さんのひとこと

裁判員制度の身近さと守秘義務の精神的負担を多面的に見つめました。記事は少ないけれど、的確に選びました。

信州 金環日食 長野市・信大付属長野中2年 河原 嵩史さん
未来をつなぐリニア中央新幹線〜新たな希望〜

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理科離れの懸念知る

「173年ぶりの貴重な天体ショーに興味を持ち、取り上げました。金環日食を見ようと楽しみにしている人が多かったことや、驚くほどの経済効果があったこと、太陽の大きさなどの知識が分かりました。学校でも校庭に集まって観察しました。すごく感動しました。子どもたちの理科離れが懸念されていることも知りました。僕も理科って面白いと思ったので、これを機に天文や理科への関心が高まればいいと思います」

中川さんのひとこと

理科離れといわれる現状を踏まえ、金環日食の観察を通して理科への関心を高めてほしいとの思いがにじみます。


〜私達の未来〜原発への不安と再稼働 長野市・信大付属長野中2年 吾妻 このかさん
大関魁皇 相撲人生に悔いはなし

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再稼働を問題に思い

「昨年3月の東日本大震災の際、原子力発電所で事故が起きたにもかかわらず、福井県の大飯原発が安全対策が不十分なまま再稼働することを知り、問題に思いました。調べると、原発に対する不安の声がある一方、再稼働を歓迎する住民がいることや、経済に与える影響が大きいことが分かりました。脱原発を目指すだけでなく、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを活用し、安心して暮らせる未来になってほしいです」

中川さんのひとこと

原発再稼働に関連し、原発の必要性や問題点などを洗い出しています。安心で安全な未来への願いも明確です。

これが現実。―いじめの今―

長野市・川中島中2年 青木 千菜美さん
長野市・川中島中2年 源氏 沙奈さん

あなたはどう考える風評被害

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少しずつなくなれば

「大津市の中学生が自殺したニュースを知り、同世代の人が自殺にまで追い込まれていることが悲しかったし、衝撃を受けました。大津市のケースでは学校側の対応も良くなかったと知り、先生を頼って良いのかという疑問も出てきました。今回の作品を見て、少しでも学校や先生、生徒、親にもいじめについて考え直してもらいたい。いじめられた人の身になって考えたりすることで、少しずついじめがなくなればいいと思う」

先生も支えてほしい

「最近、いじめについての報道をよく見ます。私はこれまで、いじめについて深く考えたことがなかったのですが、こんなにつらい思いをしている人がいるんだと知り、いじめについて真剣に考えていく必要があると思いました。悩んでいる友達がいたり、トラブルがあったりした時にはしっかり相談に乗ることも、いじめをなくすことにつながるかもしれない。生徒だけだと難しいので、先生にも支えてほしいです」

中川さんのひとこと

「思いやりを持つ」「大切な命を捨てない」というコメントに力がこもります。イラストの手も効果的です。

日本を揺るがす領土問題 長野市・若穂中3年 鈴木 麻実さん
日本がゆれた〜長野にも迫る恐怖〜

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政府、もっと話し合って

「尖閣諸島と竹島をめぐる中国と韓国との領土問題が新聞やテレビのニュースで多く取り上げられていて、もっと詳しく知りたいと思ってスクラップしました。尖閣諸島は、香港の団体が上陸したり、中国でデモが起きたり、領土に対して中国の人はここまでやるのかと感じました。竹島は、旧日本軍の従軍慰安婦問題など戦後処理が強く影響していると思いました。日本の政府が中韓の政府ともっと話し合い、平和に解決してほしいです」

中川さんのひとこと

竹島と尖閣諸島の問題を、関係各国の現状からさまざまな視点で分析しています。自分の考えも明快です。

今を生きる子どもたち長野市・若穂中3年 末岡 花さん
日本の農業が危ない

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地元に貢献、印象残る

「自分と同じ年代の人たちが何をやっているか興味や関心があって、テーマに子どもを選びました。記事を集めて印象に残ったのは、行事に合わせて自分たちでデザインした商品を販売するなど、子どもが地元に貢献しようとしている様子です。子どもたちが地元を好きになると思うし、大人も行事や商品への関心が高まると思います。子どもの頑張り以外も知ってもらおうと、いじめや学校で起きている問題も取り上げました」

中川さんのひとこと

他の人や地域のために活動する子どもの姿から、自分も「頑張ろう」と主張。コメントも分かりやすいです。


【奨励賞の作品】

審査評・中川さん 「学び方を学ぶ力」が伸びる

信濃毎日新聞社 NIEアドバイザー 中川 弘泰さん

 
 今回は、昨年より4割近く多い1139点の応募がありました。増加の背景には、新聞を教育で活用することで、学習指導要領が求める「思考力、判断力、表現力」といった基礎学力を生徒が身に付けられる、と実感する教員が多いためだと思います。さらに、新聞作りへの挑戦意欲がかき立てられた証だと考えます。

 スクラップ作品は、テーマを決めて記事を集め、自分なりの考えをまとめて仕上げます。応募作品のテーマは、生徒に身近で切実ないじめ、日本の領土、エネルギー、原子力発電所といった今日的課題のほか、感動を呼んだロンドン五輪など多様でした。自分の訴えたいことを強く意識し、それにふさわしい記事を選び、社会情勢を分析して考えをまとめていました。

 構成にも工夫が見られ、洗練されていて質が高い力作が多くありました。どの作品も、文字の大きさや行間、レイアウトなど読みやすさを考え、記事と見出し、コメントなどをバランスよく配置しています。そして、親しみやすく温かみの感じられる作品がいくつも見られました。

 応募した中学生は、制作によって「学び方を学ぶ力」を伸ばしたことでしょう。特に優秀賞作品は「インパクトのある見出し」「端的で鋭いコメント」「分かりやすく読みやすい記事の仲間分けと配置」といった点で優れています。入賞作品を見て、多くの中学生が作品づくりに挑戦し、社会に関心を持つとともに、社会性を身に付けるよう願っています。