表彰式

社会を見つめ考える

 第7回中学生新聞スクラップ作品コンクール(信濃毎日新聞社、信濃毎日新聞販売店会主催)は、県内24校から過去最多の計1158点の応募がありました。訴えが明確か、読む人に分かりやすいか―などの基準で審査し、優秀賞10点、奨励賞20点、特別賞4点を選びました。
 多くの作品が、来年4月に予定される消費税率の引き上げ、東京電力福島第1原子力発電所の汚染水漏れなど、日本社会が直面する課題を取り上げており、中学生の問題意識がはっきりと表れています。2日に長野市の信濃毎日新聞社で優秀賞の受賞者の表彰式が行われるのに合わせて、全入賞作品を紹介します。(受賞者の名前の前にある市町村名は学校の所在地です)

※写真かタイトルをクリックすると拡大して見ることができます。

誰かの為に咲かせる花

原村・原中2年 細川 未夢さん

みんなを笑顔にする

「花が好きで、家の花壇で育てています。花についての記事を集めて感想を書き、見出しを付けてまとめました。地域にある花の名前や特徴を知ることができました。見る人を笑顔にしようとさまざまな人が花を咲かせています。誰かのためにと思えるのは優しい心を持っている人。私も花を元気に咲かせ、みんなを笑顔にしたいです。きれいな花を見たら、誰かが一生懸命咲かせたんだなと思うようになりました」

中川さんのひとこと

花が与えてくれる力や楽しむ心がよく分かり、明るい色調で表現しています。読み手を引き付ける見出しです。

夏行事で伝えたい!信州の伝統と元気

長野市・信州大付属長野中2年 吉越 理乃さん

長野県らしい作品に

「長野県らしい作品を作ろうと思いました。夏は県内各地で行事や祭りが多いので、いろいろと調べてみました。南信地方には初めて知る行事や祭りもありました。祭りに関する記事はたくさんありましたが、ただ楽しんでいるだけでなく『伝統』『元気』『あこがれ』などのキーワードがある記事を選びました。もしまたスクラップ作品を作る機会があれば、長野県らしく『雪』をテーマにしたいと思います」

中川さんのひとこと

県内各地の夏の行事を、地区別に色分けして分かりやすいです。詳しい説明で全体をまとめています。

国際社会合意形成への道~シリア内戦軍事介入回避~

佐久市・佐久長聖中3年 橋部 萌野さん
佐久市・佐久長聖中1年 橋部 綾野さん

悩みながら外交解決

「8月にテーマを決め、4月以降の新聞をチェックしてシリアの内戦に関係する記事を全て切り抜きました。米国のオバマ大統領が悩みながら軍事介入を回避していく様子を、分かりやすいように時系列で左から右へまとめていきました。オバマ大統領が外交による解決を選んだことで軍事介入は避けられましたが、まだシリアでは悲惨な内戦が続いています。これからどうなっていくかを見続け、考えていきたいです」

考えるきっかけになる

「難しいテーマだと思ったけれど、一緒に作る姉と話し合って決めました。世界では悲惨な内戦が起きています。日本で暮らしていると、分かりにくい問題ですが、このコンクールが、考えるきっかけになりました。シリアの問題に関する記事はたくさんあって、作品に使用する記事を選ぶのは大変でした。化学兵器が使われ、何も悪いことをしていない人たちが巻き込まれていると知り、許せない気持ちになりました」

中川さんのひとこと

シリア内戦の現状と課題を的確に読み取っています。平和解決の重要性を訴えていることに共感できます。

ネット社会が抱える光と影

飯田市・飯田東中1年 宮沢 昂也さん

使い方、気を付けたい

 「LINE(ライン)やインターネットを使った事件が気になり、スクラップをしてまとめました。LINEもネットも便利ですが、使い方を誤ると他人を傷つけたり、いじめを引き起こしたりします。海外ではネットのやり過ぎで悪影響を受けた若者がいたことも知りました。将来、LINEを使う時は、相手から返事が来なくても不満を言わないようにしたいです。ネットに不要な書き込みもしないようにしたいと思います」

中川さんのひとこと

ネット社会の現状がよく分かる配置です。光と影の中で、自分がどう関わるかが明確に主張できています。

それでいいのか!汚染水問題

松本市・奈川中2年 高宮 健輔さん
松本市・奈川中2年 越村 拓也さん

ニュースに関心持った

「汚染水問題を取り上げたのは、日本社会が抱える大きな問題を知りたかったからです。4月から半年間、汚染水問題のスクラップを集め、50点以上の記事から作品に使う十数点を選ぶことは大変な作業でした。記事には知らない用語なども多くあり、担任の先生に聞いたり自分で調べたりしました。スクラップをきっかけにニュースに関心を持ったので、これからも新聞などで調べ、汚染水問題に目を向けていきたいです」

なぜ税金を使うのか

「本を読むのが好きで、学校の図書館で見つけた東日本大震災の本をきっかけに汚染水問題を取り上げました。スクラップする記事が多く、全てに目を通すことは大変でした。スクラップでは『なぜ国民の税金を使うことなのか』という自分の疑問を常に持って調べました。2人での作業だったので協力して力作ができました。社会科に苦手意識がありましたが、少し好きになりました。来年の公民の授業が楽しみです」

中川さんのひとこと

「それでいいのか」という強い訴えに力がこもっています。深刻な原発の問題と、しっかりと向き合っています。

私たちの暮らし増税になるとどうなる?

安曇野市・豊科北中1年 小林 叶音さん

影響や受け止め調査

「母が『消費税増税になるのかな』と心配していたので、暮らしにどんな影響があるのか、人々がどう受け止めているのか調べてみました。投稿欄では、福島の復興が先、外国の例を参考にといった意見がありましたが、思ったより増税を仕方がないと感じている人が多かったです。国は食料品への軽減税率適用など負担を減らす対策をもっと考え、増税した効果を分かりやすく公表すれば、みんなも納得できると思いました」

中川さんのひとこと

増税の課題を、政府、企業、家庭の観点から分析しています。イラストによる人々の声が効果的です。

日本経済を救えるか…アベノミクスの明と暗

佐久市・佐久長聖中2年 赤池 宏太さん

マイナス材料もあった

「新聞を見ていて、いつも1面に『アベノミクス』と載っていたので興味を持ちました。不景気と言われてきた日本経済をアベノミクスが本当に救えるのか気になり、調べ始めました。最初は『通貨供給量を増やせば景気は良くなる』と思っていましたが、今回調べて簡単ではないと思い直しました。ガソリンや原料高などマイナス材料もあります。安倍政権がどう景気を回復させていくのか、今後も注目したいです」

中川さんのひとこと

経済の問題を真剣に考え、明と暗で分かりやすく整理しています。インパクトのある見出しが効果的です。

平和のバトン 次世代へ

長野市・若穂中2年 岩野 芽依さん

つなげたい今の平和

「夏に太平洋戦争や外国の内戦に関係したニュースを見ました。私のひいおじいちゃんは戦争で亡くなっています。そこで、今の日本の平和を次の世代につなげたいと思って、『平和のバトン』というタイトルに決めました。戦争に関する記事はたくさんあり、どれを選ぶか迷いました。『願い』『誓い』など見出しに注目して選びました。それぞれコメントを考えるのが大変でしたが、自分なりにまとめられたと思います」

中川さんのひとこと

平和と戦争を対比しながらまとめており、分かりやすいです。コメントに平和の重要性がよく表れています。

Art 心動かすものは

長野市・若穂中2年 大日方 悠奈さん

読みやすく配置工夫く

「私は美術部に所属していて、絵が好きなのでこのテーマにしました。美術には絵画以外にも工芸や彫刻などいろんな分野があることをみんなに知ってほしいと思います。見た人が読みやすいように、記事の配置やレタリングを工夫し、花のイラストを入れました。スクラップ作品は初めて作りましたが、レイアウトを考えるのには悩みました。草間弥生さんの言葉も良いなと思ったので、その記事も入れました」

中川さんのひとこと

訴えたいことを色彩で強調しています。コメントに自分の強い思いを語り、手書きのイラストも丁寧です。

猛暑~記録更新の夏~

長野市・信州大付属長野中2年 松田 菜南子さん

猛暑の原因分かった

「以前から環境問題に関心がありました。この夏は特に暑く感じたので、地球温暖化が進んでいるのかもしれないと思ってテーマにしました。最高気温の記録更新の記事はたくさんありましたが、対策に関する記事は探すのが大変でした。猛暑の原因は、フェーン現象や太平洋高気圧の影響が大きいと分かりました。猛暑や温暖化に関する記事はたくさんあったので、スクラップ作品をもっと作れるかもしれないと思いました」

中川さんのひとこと

今夏の猛暑を原因、暑さ対策、利用、記録更新の4視点に絞り、地球温暖化と関係づけて明確に表現しています。

【奨励賞の作品】

さまざまな社会事象に強い関心

信濃毎日新聞社NIEアドバイザー 中川 弘泰

 本年度の中学生新聞スクラップ作品コンクールには、1158点の応募があり、2年連続で千点を超えました。作品は「増税」「日本経済」「猛暑」「福島原発汚染水」「シリア内戦」など身近なことから国際社会の諸問題までバラエティーに富んでいます。中学生がさまざまな社会事象に強い関心を持っている証しだと思います。全体的には、スクラップした記事の分類や整理、バランスの取れた配置などに工夫が見られ、分かりやすく説得力がありました。
 新聞スクラップ作品は、テーマに沿った記事の選択や配置といった構成も重要です。作品の命ともいえるコメントに、力がこもっているのが目立ちました。例えば「夏行事で伝えたい!信州の伝統と元気」という作品では「私も自分の地域のことを大切にしていこう、守っていこうと思いました」、「誰かの為に咲かせる花」では「人の想いが力と励みになる。私も誰かの為に花を育てたいなと思った」などです。自分が社会に貢献するために、どのような行動をすべきかを示しています。
 新聞は「日本や世界を知る情報の宝箱」です。このコンクールは、中学生が社会に関心を持ち、諸問題を真正面から捉え、自分の思いや考えをより深めることを目指しています。社会意識を高め、行動力を持つ人間の育成です。高い教育的な狙いが含まれている新聞スクラップ作品コンクールに多くの中学生が挑戦し、より広い社会性を身に付けてほしいと思います。