信毎 Housing Station
県内も注目―ゼロエネ住宅 太陽光発電で消費分賄う
2017年9月10日(日)

 太陽光発電パネルの設置などで家庭のエネルギー消費分を賄う「ゼロ・エネルギー住宅」が県内でも注目を集めている。国は2020年までに新築注文住宅の過半数をゼロエネ住宅にする目標を掲げて補助金を支給し、いずれは標準化を目指す。受注獲得のチャンスと捉える住宅建築業者がある一方、補助金の使い勝手の悪さを指摘する声もあり、どこまで広がるかは未知数だ。

 「毎日、仕事から帰ってきて、どれくらい発電できたかモニターを見るのが楽しみ」。岡谷市の20代の会社員男性は、発電容量約5キロワットの太陽光発電パネルを乗せた住宅を新築した。パネルの設置費用は136万円。経済産業省資源エネルギー庁が普及を促す「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」の補助制度で125万円を取得して賄った。7月末に入居し、1カ月間の電力会社への売電額は1万6千円。使った電気代約4千円の4倍に上る。

 家自体が高断熱・高気密の仕様で、夏は朝に窓を開けて冷気を中に入れ、気温が上がる昼間は冷気を維持するために窓を閉める。今夏も暑かったが、男性の妻は「外出から帰ると家の中の方が外よりも涼しい」と満足げだ。

 この住宅を手掛けたのは、住宅建築のホームライト(諏訪市)。住宅のエネルギー収支を重視しており、施工から3年間は、設計段階で想定した電気料金を実際の電気料金が超えた場合には自社が差額を原則負担するサービスを続けてきた。

 昨年度、同庁がZEHの施工業者を対象に「ZEHビルダー」登録制度を始めると早速登録し、今年のZEH補助金の取得は計7棟分を目指す。小川新作社長は「これまでに手掛けた新築住宅は電気料金のデータを取っているし、ノウハウもある。ZEH補助金を受注獲得に生かしたい」と話す。

 安曇野市で3日、住宅建築のヴァルト(長野市)が施工した住宅の内覧会があった。施主の会社員米山大輔さん(31)は、国土交通省の「地域型住宅グリーン化事業」のゼロエネ住宅補助金165万円に、3世代で住宅を使う場合の追加分30万円を合わせ、195万円を得た。太陽光パネルの発電容量は7・8キロワットで、ほぼ全額を補助金で賄った。

 「光熱費がなるべく安く済むように、断熱がしっかりしていることをポイントに施工業者を選んだ」と米山さん。ヴァルトは冷水と温水を循環させる冷暖房システムや木質系断熱材を強みとする。夏場も稼働するシステムには電気代がかかるが、太陽光発電で自家消費分を賄うことができる。

<国の補助金、使い勝手に課題も>

 政府は地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」を踏まえ、温室効果ガス排出量を2050年に8割削減する目標を掲げる。家庭部門の省エネ化も重視。今年6月に閣議決定した「未来投資戦略2017」で、20年には「新築注文住宅の過半数をZEHにする」との目標を定めた。

 だが政府の掛け声とは裏腹に、補助金の使いにくさを指摘する施工業者は多い。

 ZEH補助金は募集開始時期によって、交付決定から住宅完成までに求められる期間が最短で3カ月程度の場合がある。県内で新築・リフォームを手掛ける建設業者は「職人が壁を塗って仕上げる家造りには工期が短すぎる。ZEHビルダー認定は受けているが、本格的に取り組むかは検討中」。長野市の施工業者も「すぐに完成できる大手メーカーに有利な仕組みだ。前向きになれない」と話す。

 ヴァルトは、国交省のグリーン化事業補助金とZEH補助金を両にらみで活用する。ただ、グリーン化事業では1事業者につき原則2棟までしか補助を受けられない。またZEH補助金も、昨年度の125万円から本年度は75万円に減った。小野治社長は「申請にかかる費用も考えると、施主にあまりうまみがない」とみる。

 固定価格買い取り制度による太陽光発電の価格が年々下がっているため、自家消費が注目されているが、それには電力をいったんためる蓄電池が必要だ。ZEH補助金では蓄電池購入にも追加補助を得られるが、田中工務店(佐久市)の田中裕幸社長は「パネルと合わせて300万円ほど必要になり、補助金では全く足りない。導入に向けた説得はなかなか難しい」と話す。

<広がり、政府目標から程遠く>

 資源エネルギー庁によると、2016年度にZEH補助金や住宅グリーン化事業補助金を受けたか、補助金を申請しなくてもZEH性能を満たした新築住宅は、全国で約3万4千棟だった。同年度の持ち家の着工数は約28万1700棟で、12%を占める計算だ。20年に新築注文住宅の過半数をZEHに―との政府目標には程遠い。

 政府は12年度にZEH補助を始め、16年度は当初予算と補正予算を合わせて1万2678棟が補助を受けた。当初予算分の補助対象約6300棟のうち、ハウスメーカーが手掛けた住宅が80%、工務店は20%。「ハウスメーカーに有利な補助金」との県内業者の見方に沿った実績で、長野県内ではハウスメーカーが70棟、工務店が22棟だった。

 住宅グリーン化事業に参画するために東北信地方の工務店約50社とグループをつくる建築資材販売の炭平コーポレーション(長野市)の担当者は「グループで省エネ住宅の講習会を開いても、出席しない業者は固定化している」とし、「補助金申請の方法が分からない、手が回らないといった事情があるとみられ、積極的に取り組む業者と二極化している」と指摘する。

 まだ広がりに欠ける現状にあるが、同庁省エネルギー課は「18年度は環境省とも協力しZEH化を推進する。20年には、補助金がなくても自律的にZEHが増えるように、住宅省エネ化の取り組みを深掘りしていく」としている。

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