信毎 Housing Station
移住人気、空き家足りない 伊那市新山地区
2017年12月16日(土)

 伊那市新山地区で、空き家が移住希望者の人気を集め、「空き家不足」になっている。官民挙げた同地区への移住促進策が成果を上げ、都市部から子育て世帯などが移り住んでいるためだ。同地区は元々空き家が少なく、仕方なく近隣地区で空き家を借りた人も。空き家の活用が課題となっている県内の他地域とは異なる「悩み」で、新山地区の住民団体からは、市営住宅の整備を求める声も出ている。

 同地区は人口約700人。市中心部から南東の山あいに位置し、里山や水田など自然豊かな地域だ。地元の新山保育園や新山小学校が小規模で異なる学年同士の交流が盛んなことや、市中心部まで車で15分ほどの利便性が人気を集めている。

 同地区の移住者増加に貢献しているのが住民約60人でつくる新山定住促進協議会だ。パンフレットやホームページで新山の暮らしや魅力を発信。協議会は専門の担当者を置き、空き家や土地の情報を集め、移住を考えている人を案内したり、相談に乗ったりしている。3年前に移住者が利用できる空き家は9戸あったが、いずれも移住者が賃借したり購入したりした。現在、同地区に県外の5世帯が移住を希望しているが、同協議会が紹介できる空き家はない。

 同地区では少子化が進んだ2009年、新山保育園が園児数の減少で休園に追い込まれた。地域の衰退を防ごうと住民たちが移住促進の動きを活発化。14年に保育園を再開させた経過もある。

 市は現在、同地区を独自の「田舎暮らしモデル地域」に指定。3泊4日以内で田舎暮らしを体験できる一軒家「田舎暮らしモデルハウス」を整備し、希望者を受け入れている。移住・定住した人にさまざまな補助金も支出している。

 こうした取り組みが奏功し、14~16年度に同協議会が支援して新山地区や近隣地区に移住した人は、東京都のほか、神奈川、埼玉、愛知の各県などから33人(10世帯)に上る。子育て世代が多く、土地購入や住宅新築はハードルが高いため空き家を求める世帯が多い。

 神奈川県から家族4人で引っ越してきた瀬戸亜希子さんは、新山小学校の素朴で礼儀正しい雰囲気などを気に入り、長男の小学校入学に合わせて移住。新山地区で条件に合う物件がなく、近くの同市高遠町で空き家を借りた。

 瀬戸さんは「家族みんながここの生活に慣れるか不安があり、空き家を借りた方が買うよりも身軽」。同じ考えの移住者は他にもいるとし、「賃貸なら集合住宅のような場所があればいい」と話す。

 同協議会長の田畑正敏さん(66)は、移住希望者が住居を確保するまでの一定期間を過ごせる簡易的な市営住宅の整備を市に要望。「新山に住む希望があっても家がなくて諦めてしまう人がいるのはもったいない」としている。

 現在、新山地区に移住者向けの市営住宅はなく、市は現時点で整備する考えはないとしている。

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