造林重点なお課題 借金返済に険しい道
十六日決まった県の二〇〇一年度当初予算案は、初めて予算編成に臨んだ田中康夫知事の意向による公共事業費の大幅カット、福祉や造林事業への重点化などが特徴だ。しかし、一兆六千億円以上の県債残高(累積の借金)を抱える県財政の健全化については、県債依存度を下げたものの、将来にわたっての明確な道筋はまだ見えてこない。知事の個人的な人脈を生かした新しい発想の啓発、宣伝事業が目立つ一方、景気浮揚や国際競争力強化をにらんだ戦略的な県内産業支援策が乏しいなど、いくつかの課題も浮上している。 |
◆事業の見直し 削減額は減少 ◆初の赤字県債 136億円
■農林 ■教育 ■医療 ■福祉 ■商工 ■企業特別会計
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| ◆事業の見直し 削減額は減少 前年度比 |
二〇〇一年度当初予算案では、女性海外派遣事業や海外労働事情調査事業など百二十八事業を廃止し、二百六十一事業を縮小するなど計四百事業を見直した。この結果、総額で三十八億二千二百万円を削減したとしている。ただ、削減額は、前年度の見直しによる削減額に比べて二億四百万円少なくなっており、事業の必要性を従来より厳しく精査できたとは言い難い。
廃止事業では十三億六千百万円を削減する。このうち、八〇年から実施していた女性海外派遣事業は女性問題に取り組む団体を派遣していたが、目的を達したと判断した。削減額は二百万円。県内企業の労使を国際労働機関(ILO)を中心に派遣していた海外労働事情調査事業も同様の理由で廃止。削減額は百八十万円となる。
知的障害児者施設整備等支援資金は、県知的障害者福祉協会に毎年一億円を原資として貸し付け、同協会が運用益で事業を行っていたが、協会の基金積み立てが完了し、独自の運用が可能になったため、取りやめた。
縮小事業による削減額は二百四十五億円。県健康事業団に運営を委託している「がん検診・救急センター」(松本市)では職員体制や医薬品の材料費見直しで四百二万円を削減。水質環境基準の常時監視は、過去の検査で問題のない地点の計測回数を減らした。 |
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| ◆初の赤字県債 136億円 |
県の二〇〇一年度当初予算案では、新たに千百五十億円の県債(借金)を発行。このうち、初めて導入された「赤字県債」(臨時財政対策債)が百三十六億円を占める。歳入のうち県債に頼る割合(県債依存度)は赤字県債分を除き九・八%で、五輪前の水準に比べ下がってきているものの、過去に大量発行した県債の返済がピークになるのはこれから。県は引き続き自由度の乏しい財政運営を迫られそうだ。
赤字県債は、地方交付税の不足分の一部を県の借金として付け替える新制度。返済時には国が全額交付税で補てんするため実質的な負担増はないとされるが、自治体によっては借金増を嫌い、発行を抑制する動きもある。
だが、今回県は限度枠いっぱいの百三十六億円を計上した。県財政課は「基金の取り崩しも続いており、今の段階では枠いっぱい借り入れないと財政運営できない。(全額交付税措置があるため)実質的にはこれまでと変わりないという考え方もある」とする。
一方、全体の県債発行額は年間二千億円以上を借り入れていた九五、九六年度に比べると半分以下で、九二年ころの水準にまで戻した格好だ。毎年の返済額が増え続け、借り入れ額を上回っているため、〇一年度末の県債残高は一兆六千六百十五億円と、本年度末(一兆六千六百二十八億円)に比べわずかながら減少に転じる見込みという。
ただ、一般財源に公債費が占める割合を示す公債費負担比率が九九年度、岡山県に次いで全国ワースト二位になるなど、既に県の借金水準は全国的にも突出しているのが現実。また今後の県債発行額は赤字県債の増加などに伴い、二〇〇二年度以降再び増える見込みで、当初予算案が財政健全化への明確な道筋を示したとは言い難い。 |
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| ■農林 |
<増える間伐材 どう利用>
田中知事が政策の柱として掲げた森林整備事業を増額、間伐面積を大幅に拡大する。ただ、県産材の利用促進に決め手はないままで、山林に放置される間伐材が増えかねない事態をどう回避するか、有効な対策は見えていない。
森林整備事業は二〇〇〇年度現計比三三・〇%増の四十九億八千六百万円余を計上。特に緊急課題として間伐を二〇〇〇年度実施見込み面積より七三・二%多い一万二千九百二十八ヘクタールに拡大する。
県産材の利用促進対策事業(二億六千五百万円余)は、インターネットなどを活用した木材需給の情報提供拠点、加工流通施設の整備、公共施設での県産材利用促進を図る。
だが、間伐材が増えても利用拡大は容易でない。新たな方法や技術の開発は、間伐促進と軌を一にして取り組まねばならない早急な課題として残っている。
農政部予算案では、県産農産物のブランド力向上に向けて著名なソムリエらを迎えた「マーケティング戦略推進プロジェクト事業」(約四百二十万円)、ブラックバスなどを駆除する在来淡水魚保護増殖対策(四千三百万円)など、話題性のある事業を計上。中山間地域の農家への直接補償も二〇〇〇年度当初比の約二倍の二十四億一千万円余を盛った。
一方、新規就農促進事業は市町村の研修施設整備などの要望がなく、同三四・四%減額の五千三百万円余。一九九九年度の新規就農者数は百六十人で県が目標とする三百人を大きく下回っている。営農システムの改善など長期的な改革も不可欠だが、後継者問題にテコ入れする対策は示せていない。 |
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| ■教育 |
<少人数学級110校で 教職員400人増は国計画通り>
小中学校の「少人数学習集団編成事業」をスタートさせる。今後五年間で、小学二―六年生の国語と算数、中学生の国語、数学、英語を三十人以下のグループ授業ができるようにするなどで、教職員を約四百人増やす計画。小学校一年生については、特定科目に限らないで教員を複数配置する計画を二〇〇三年度以降に具体化させる。
来年度は小学五、六年の国語と算数、中学三年の数学が対象。正規教員八十人分(約五億五千二百万円)を見込み、小学校九十四校、中学校十六校を対象とする予定だ。
ただ、こうした増員は、文部科学省の教職員配置改善計画に沿った範囲にとどまっている。前回の教職員配置改善計画(九三―二〇〇〇年度)では、中学校のチームティーチング教員の配置を国の基準を前倒しして行ったが、今回は県が先んじて増やしてはいない。財政負担を抑えようとしたため、独自色は薄くなった。
盲、ろう、養護学校の教育充実では、保護者から要望があった施策の具体化が目立つ。肢体不自由児の稲荷山養護学校を、知的障害児も通えるようにするなどの改築計画に千六百万円。一千万円を盛ったスクールバス整備では、上田、飯山の二養護学校に一台ずつ増車、飯山、稲荷山の二養護学校のバスを更新する。
このほか、県立高校の通学区のあり方の論議を始めるのに九百万円、上伊那農業高校の定時制を念頭に、多部制単位制の独立校開設に向けた準備費七百万円などを新たに盛った。一方、生徒指導面を支える事業は目立たずスクールカウンセラーを五人増の三十六人とするなどにとどまった。 |
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| ■医療 |
<こども病院長期入院乳幼児家族向け宿泊施設も>
県立病院では、こども病院(南安曇郡豊科町)の敷地内に、長期入院する乳幼児の家族の宿泊施設を五千六百万円で建設する。昨年十二月に知事が視察した際、独自に同様の施設を運営するボランティア団体から要望を受け、建設を約束していた。
須坂病院(須坂市)の整備事業は七十二億六千九百万円を計上。脳神経外科の新設に知事が慎重姿勢を見せていたが、必要性を認めて継続が決まった。厚生労働省が廃止する方針の国立療養所東長野病院(長野市)の結核病床(三十床)を、須坂病院で確保する方針となり、西棟改修は計画を変更する。
整備を進める一方で、百億円近い累積赤字を抱える県立病院事業の見直しも求められる。本年度から経営健全化計画を本格的にスタートさせているが、県の負担金の決定や支出方法など、改善の余地は残る。
知事が選挙時に公約に掲げた「疾患ICカード」は導入にかかるコストなどから早期の導入は困難な見通し。パソコンを通じて総合病院と診療所を結び、患者情報を交換するモデル事業を八百万円で飯伊地区で行う。協力する医療機関は未定で、どの程度の実効性があるかは不透明だ。
二〇〇三年度から五カ年の第四次県保健医療計画と地域保健医療計画の策定に四百二十万円を計上した。三次救急医療を担当する国指定の救急救命センターがない中信地方の現状など、知事も指摘する課題にどう取り組むかが焦点だ。
無医地区の出張診療所運営費補助は、対象条件を広げて二百九十八万円、伊那中央病院(伊那市)の移転新築への補助は七千四百万円を盛った。 |
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| ■福祉 |
<老人福祉施設整備に58億 宅老所補助は見送り>
導入から二年目を迎える介護保険制度関連では、老人福祉施設整備への補助が五十八億三千七百万円で、本年度当初の二倍以上の伸び。ただ、本年度十二月補正後の総額と比べると二・六%のマイナス。補助事業のほとんどは国が提示した事業の運用にとどまり、県の独自色は薄い。知事が補助に前向きな姿勢を見せていた宅老所への補助は、制度内で対応できるなどを理由に見送った。
特別養護老人ホームは新設八カ所を含む十四カ所の整備を補助。整備後の県内定員は七千五百八十一人となり、信州ゴールドプラン21で設定した二〇〇四年度の目標をほぼ達成する。
生活支援、介護予防、生きがい活動支援などは十六億千四百万円。市町村の介護相談員の派遣、新規事業のケアプラン指導研修と地域のサービス情報のマップ化の補助などに計三千百万円を計上した。
県単独事業として、寝たきりの高齢者を六カ月以上家庭で介護する家族への慰労金(年三万円)は、国の家族介護慰労事業の二〇〇一年度中の見直しを待つとして継続。三億二千五百万円を盛った。
県施設のバリアフリー整備事業は六千五百万円。県庁や合同庁舎のトイレを車いす利用者も利用しやすくしたり、県勤労者福祉センター(長野市)にエレベーターを設置する。このほか、県内二カ所程度を指定し、住民参加で計画を作るバリアフリーモデル地区整備事業を始める。 |
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| ■商工 |
<観光、ソフトに力 製造業支援策は乏しく>
商工部予算は、低迷する県内観光や商店街の活性化を図るソフト事業に力を入れた。知事の肝いりで、話題性のある新鮮なプロジェクトが多い。一方、県内産業界を支え、内外の厳しい競争下にある製造業への支援策は新味に乏しく、「商高工低」の感も否めない。
ホスピタリティー研究会(五百万円)は、田中知事が公約に掲げた「観光学校」設立も視野に、サービスに携わる人材育成全般の理念を全国の専門家らが論議する。観光キャンペーン事業(二千万円)では、県観光キャンペーン推進協議会が県内の宿泊、観光施設などの料金を割り引くカード型CD―ROMの共通パスポートを発行する。
商店街振興では、全国から商店街づくりに実績を上げた人を講師として招き活性化を考える「にぎわい創出研究会」(一千万円)を盛った。当初案では講師に商店街トップらを見込んでいたが、「実務者でないと意味がない」と知事が査定で指摘した。
製造業への振興策では、工業関係試験場への先端機器導入を継続。制度資金の工業団地進出企業への融資目標額も、前年度実績に基づき引き上げる。
だが、全国の自治体が先端産業の誘致に力を入れ、県内メーカーの拠点流出も始まっている事態に危機感が感じられる施策は少ない。情報技術(IT)関連が好調な県内製造業も、進出コストの高さや優れた人材が確保できない問題から県内拠点の拡大に消極的な声が出ている。立地の利点をアピールしたり、人材確保などの施策展開が急務だ。 |
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| ■企業特別会計 |
<須坂病院整備に72億>
県が十六日決めた二〇〇一年度当初予算案の五企業特別会計は、総額五百七十二億七千六百万円で、前年度当初比二十五億三千万円(四・六%)増となった。
病院事業は、二〇〇二年三月完成予定の新棟を建設中の須坂病院(須坂市)整備事業に前年度当初の約三倍の七十二億六千九百万円を計上。総額は前年度当初比一〇・四%増の二百八十三億二百万円となった。
水道事業は同四・一%増の百三億三千七百万円。異物混入で相次いで水道水供給がストップした上田水道管理事務所諏訪形浄水場(上田市)と松塩水道用水管理事務所本山浄水場(塩尻市)の取水口に、油の混入を自動検知する油分計を設置する。
観光施設事業は、二〇〇二年に無料開放する県営霧ケ峰有料道路(ビーナスライン)の累積赤字に、一般会計から補てんすることが決まったため、運転資金の借り入れが減る見通しとなり、同二二・二%減の四十一億六千三百万円。電気事業は、菅平発電所(小県郡真田町)取水トンネル改修などのため同七・一%増の六十二億千三百万円となった。
十一ある県の特別会計は総額三百五十四億五百万円で同四十四億三千二百万円(一一・一%)減。流域下水道事業費、小規模企業者等設備導入資金など八会計で前年度当初を下回った。 |
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