「田中県政」

2月定例県会 田中知事の提案説明(要旨)


2月21日(金) 掲載 


 新年度の県政運営に向け所信をお話しさせていただきます。

 昨年十二月、厚生労働省が公表した平成十二年都道府県別生命表によると、長野県の平均寿命は、男性が七八・九〇歳で一位、女性が八五・三一歳で三位でした。「長寿国」日本において、長野県はまさに世界一の「長生きの里」とも言え、その地位を不動のものとしています。しかも、長野県における高齢者の就業率は全国一高く、一人当たりの老人医療費は全国一低いのです。

 そこには、農村医学に生涯をささげた医師や看護師、保健師ら地域医療関係者のたゆまぬ努力があり、何よりも彼らや彼女らの指導に対し、真摯(しんし)に応えて連携した県民一人ひとりの健康意識の高さや健康づくりへの主体的な取り組みがあったのです。

 産業界においても、変革の担い手は常に県民でした。製糸から出発した長野県の製造業は、精密機械工業へ、そしてIT(情報技術)に代表される電気機械工業へと大転換を果たしましたが、それらもまた、行政のひ護の下に行われたものでなく、進取の気性に富む地場の経営者と勤勉な長野県民の意欲と協力のたまものだったのです。

 今日の長野県は、自律心と向上心にあふれる県民の自己判断、自己責任に基づいた行動と、一人ひとりの相貌(かお)が見える緩やかな集合体としての協働がつくり上げてきた産物といえます。

 しかしバブル経済崩壊後、日本経済が長期低迷する中で、いまだかつて経験したことのない人口減少・超高齢社会の到来を目の当たりにし、日本という社会は明治維新以来の歴史的な転換期を迎えることになりました。

 冬季五輪という世界的な宴(うたげ)を成功裏に終えた後の長野県もまた、次なる私たちが目指すべき方向をすぐには見いだせず、誰もが変革への期待を抱きながらも、“燃え尽き症候群”とも評するべき閉塞(へいそく)感に陥っていたのかもしれません。加えて、バブル経済期の終えん後に、さらに最大時で公共事業費が約二倍に、県単独事業費が約三倍に膨れ上がった長野県は、その後遺症としてのゆがみが顕在化し始め、今こそ改革を行わねばとの想(おも)いが、長野県を愛する県民の共通認識として膨らんでいったのです。

 私をはじめとする三万人余の県職員は、県民のための奉仕者であるとの誓いをあらためて心に刻み込む必要がありましょう。この議会棟の隣に位置する本庁舎、あるいは霞が関や永田町、さらには各種の補助金でつながる団体や組織を向いて仕事をするのではなく、県民の切なさを敏感にとらえ、社会の矛盾や不正に県民と共に憤り、解決すべく全力を尽くし、最後には県民と共にほほえむことができる長野県を目指すパブリック・サーヴァントたるべきです。組織改編に加えて、人事評価や人事研修も抜本的に変わらねばなりますまい。頭で考えた内容を書類に記す前に、体で感じた内容を実行に移す。こうした意識と意欲の県職員一人ひとりが、向上心あふれる県民と県民との接続コードの役割を果たしてまいります。

 自律した県民と県民の力、さらに豊かな自然の力が融合した時、まさに日本列島の背骨に位置し、あまたの水源を擁する長野県において、私たちが自然の恵みを存分に享受し、生き生きと暮らしていける、持続可能な脱物質型社会、すなわち低成長下においても豊かさを実感できる社会が、他の日本のいかなる地域にも先駆けて構築できるでありましょう。

 戦後最大の県税収入の落込みと一兆六千五百億円もの県債残高、一日当たりの利息が約一億二千万円という天文学的課題を抱える中、持続的な財政構造への転換を図るため、このたび「財政改革推進プログラム」を策定しました。同時に「産業活性化・雇用創出プラン」を発表し、これからの産業活性化と雇用創出の道筋を示しました。

 「産業活性化・雇用創出プラン」では、産業活性化による雇用創出について、新産業創出も含め、分野ごとの施策展開を提示したほか、雇用のミスマッチの解消や就業機会の確保についても具体的な方策を組み立てました。特に、産業構造変化の痛みを最も感じている建設産業については、その影響を緩和するため、建設産業の構造改革を後押しするチームを設置するなど、経営革新、新分野への進出を支援してまいります。

 このプランに掲げる施策を実施することにより、財政改革推進期間中の平成十五年度から平成十八年度までの四年間に常勤雇用で二万人を超える雇用創出が図られるものと予想しています。「財政改革推進プログラム」「産業活性化・雇用創出プラン」、そして今回提出した「平成十五年度当初予算案」が三位一体として機能することによって、長野県の社会・経済構造の改革は推し進められるものと考えます。

 今回の予算案は、「財政改革推進プログラム」に基づき「長野モデル創造枠」を活用した選択と集中による「財政改革断行予算」と位置付けられます。

 旧来型の公共事業の削減や職員給料の減額等により予算規模は縮小していますが、福祉・医療、環境、教育、産業・雇用など、真に必要な施策には重点的に財源を配分しており、義務費と投資的経費を除いたその他行政費では、歳出の抜本的見直しを勘案すると、実質的に前年度を上回る額を計上しています。

 ここでの長野モデルとは、従来の問題調整型の発想から転換し、日本の改革をリードする新たな長野県をつくるため、重点分野の施策に加え、新たな視点や手法で先導的に県民益を創出するための事業を展開していくものです。長野モデルの採択に当たっては、構造改革特区に関し寄せられた多くの提案のように、規制の枠を乗り越えるコペルニクス的な現場からの発想を大切にしました。

 さらに、予算編成過程においては、予算がなければ事業はできないという考えを排し、予算なしでも県職員が自ら市町村や県民の中に飛び込み、足を使い、汗をかくことにより実現できる事業の導入を検討し、いわゆる「ゼロ予算事業」として積極的に取り組むこととしました。県政最大の事業費とは実は、警察・教育を加えれば三万人にならんとする長野県最大の雇用の場たる県庁で働く地方公務員の人件費でありましょう。当初予算案における人件費の割合は、29・3%に上ります。一人ひとりの県職員が県民サービスを行う営業担当者の心意気で取り組む。これもまた、財政改革の新しい方向です。

 人件費の削減に関しては、一般職の方々に関しても平成十五年四月から三年間、給料を5%ないし10%、人事委員会勧告分と合わせますと7%ないし12%減額することで同意いただきました。五十時間に及ぶ話し合いの末、理解くださった職員一人ひとりにあらためて感謝の意を表します。

 財政改革とは、これまでの常識や慣習を良い意味で打ち破り、真に必要な施策に大胆な発想で財源配分を行い、産業の活性化や雇用の創出を図ることにより安定的な財源を確保し、二十一世紀型の新たな財政システムを構築することです。

 当初予算案はこのような理念のもとに、「優しさ」「確かさ」「美しさ」という数字の世界では表しにくい県民一人ひとりの思いを踏まえ、編成したものです。

 最初に「優しさ」の実現です。優しさとは他人に対する哀れみや同情ではありません。目指すのは互いに認め合い、優しいまなざしをもって見つめ合える社会、年齢や性別、肩書きや経歴、国籍や障害の別を問わず、誰もが人の息吹やぬくもりを当たり前のように感じ、共に暮らせる社会です。(具体内容は省略)

 続いて「確かさ」の達成です。今、混迷する社会・経済情勢の中で、県民の多くは不確実な将来に居場所を見いだせず、不安を抱えたまま暮らしています。何よりも、生きる意欲のある人が確かさを実感できる社会でなくてはなりません。努力する人が報われる、不安を感じず前向きに生きられる、それが私たちの願う「確かさ」です。(具体内容は省略)

 最後に「美しさ」の創造です。美しさは長野県の誇りです。清浄な空気に清らかな水、蒼(あお)き空に緑の森、そしてそこに暮らす人々の心。人と自然が織りなす「美しさ」をはぐくみ、後世代への贈り物とすることが、今を生きる私たちの責務であります。(具体内容は省略)

 生まれ、育ち、老いる。一人ひとりが社会の主役である人生のステージにおいて、いつでも、どこでも、誰もが、勇気と希望を抱き、胸を張って歩いていける長野県でありたいと願っています。




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