委託先・予定価格いぜん非公開 住基ネット侵入実験


 県が行った住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の侵入実験をめぐり、実験結果の速報を発表した後も、実験の委託先や随意契約した委託料の予定価格を公表しない状態が続いている。県は情報公開条例や財務規則の運用通達を「非公開」の理由にしているが、同様の事業や公金支出では公開している例もある。なぜ、今回だけ公開しないのか。庁内からも「情報公開の流れを逆行させかねない」と疑問の声が出ている。

 「(実験の)作業は完了しているのだから、委託先の氏名を公開してもおかしくない」

 「仕事は終わっているのだから、予定価格を公表しても事業に支障はないはずだ」

 今月十八日の十二月県会総務委員会で、県の姿勢に疑問が相次いだ。

 実験の委託先などをめぐっては、九月県会でも議論になり、県側は「正確な実験を行うためには、実験者に静かで集中できる環境を与えなければならない。第三者の評価を加えて、一括公表する」と説明していた。

 だが、結果を公表した後、再実験の期間や委託契約額は明らかにしたが、委託先は、県会側に示した請求書に「セキュリティーコンサルタント」の肩書きを載せているだけ。予定価格も見積書の積算単価を伏せており、非公開のままだ。

 委託先を公表しない理由について、県は「契約相手が個人のため」と説明する。県情報公開条例で、「氏名、生年月日など特定の個人を識別できる」情報は、プライバシー保護の観点から非公開としているためだ。

 ただ、個人であっても「事業を営む個人の、その事業に関する情報」の場合は例外とされ、企業など法人と同じ扱いとなる。県の事業委託を受けた企業名はこれまでも公開されており、家族経営の小規模事業者や農家も公開対象だ。

 情報公開の先進事例を提供しているNPO法人「情報公開クリアリングハウス」(東京)の奥津茂樹理事は「今回は県の事業委託を受けたケースで、公開対象になる『事業を営む個人』に当たるはず」と話す。

 食糧費や交際費の場合は、相手が個人でも氏名は公開されるようになった。県は「食糧費は適正な支出かどうか県民の関心が高く、特例的に公開している」と言う。だが、県民の関心という点では住基ネットの問題も同様だ。

 一方、予定価格については、建設工事や設計、測量の委託業務の場合、入札後に県のホームページで公開している。

 県文書学事課は「建設工事は例外的。同種の入札で予定価格が類推されるため、それ以外は入札後も秘密にしている」と説明するが、県が六月に入札した公用車の予定価格など、ほかにも公表したケースはある。今回も、税金を使った契約の透明性を保つという観点からすれば、公表が当然のケースではないか。

 情報公開や説明責任は、県民主体の県政を進める上で欠かせないもので、田中県政の姿勢を示すキーワードの一つだった。それだけに、今回の県の姿勢に、県庁内からも「ほかのケースと整合性がとれない」とする意見が出始めている。

 「『県は隠したいことがあるのではないか』と受け取られても仕方ない」。クリアリングハウスの奥津理事は、県が非公開の姿勢を続けると、実験結果自体の信ぴょう性を揺るがしかねない―と指摘している。(島田誠記者)

(2003年12月30日 信濃毎日新聞掲載)