「田中県政」

12月県会 知事提案説明の要旨


12月3日(金) 掲載 


 去る十一月二十六日、平成十八年度までの「三位一体の改革」の「全体像」とされる政府案が決定しました。しかしながら、その実態は残念ながら、曖昧模糊(あいまいもこ)とした先送りです。とりわけ、税源移譲について、既に移譲された本年度分六千五百六十億円も含めて「おおむね三兆円規模」とされるなど、地方の側が期待していた姿とは大きく異なるものとなっております。今回の政府案は、地方分権よりも「省益」や国の財政再建を優先し地方に負担を転嫁するもので、まさに憂慮した事態となっております。

 一方、地方交付税については、来年度以降もさらに大幅に削減すべきといった提案がされるなど、税財政面における地方の自由度を高めるという地方分権改革の目指す姿からはかけ離れ、ますます混迷の度合いを深めつつあります。いま一度、改革の原点に立ち返り、議論を振り出しに戻すべきでありましょう。

 去る十月の台風22号および23号の県内通過に伴い、県内各地で土砂崩れや地滑り、河川や内水のはんらん、道路の崩壊といった災害が発生し、家屋をはじめ、公共土木施設、農林業施設、鉄道、農作物等に甚大な被害がもたらされました。被害総額は合わせて四百六十四億円余となっております。早期の本格復旧に向けて一層の努力を傾注してまいります。

 十月二十三日に発生した新潟県中越地震は、お隣の新潟県に甚大な被害をもたらしました。長野県は震災発生翌朝から、集落が寸断された山古志村、川口町を中心に、乳児の離乳食をはじめとするさまざまな物資の支援をヘリコプターで行うとともに、「適材適所・適宜・適量」なお手伝いを心掛けてきました。被災者の方々への心のケアについては、保健師やスクールカウンセラーで構成する「被災地支援キャラバン」を編成し、移動絵本図書館「おはなしぱけっと号」とともに派遣いたしました。

 今回、被災地の状況を見聞して感じるのが、地域や人々のきずな、コミュニティーが持つ力であります。信頼と協力のきずなで結ばれた「コモンズ」の創生こそが防災の原点、のみならず長野県が目指すべき社会のありようなのだということを再認識したところです。

 来年二月二十六日から開催される「2005年スペシャルオリンピックス(SO)冬季世界大会」の開催にあたり、SO日本の細川佳代子理事長と特定非営利活動法人2005年SO冬季世界大会実行委員会の理事長に就任された盛田英夫氏からは当初、公的な支援を求めず民間主導で準備を進めるとのお話でありました。一方、国会内にSO冬季長野大会支援議員連盟が結成され、会合の席上、河野洋平衆議院議長から「成功させなければ日本の姿勢が問われることになる」とのご発言がありました。こうした国の動きに合わせて長野県側としても対応をしていく方針が確認されることとなりました。

 安川英昭理事長の大変に有り難き献身的ご尽力の下、特定非営利活動法人2005年SO冬季世界大会・長野(SONA)のメンバーにより急ピッチで進められている大会運営準備を目の当たりにし、また、世界大会に向け一生懸命練習に励むアスリートの姿を想像するにつけ、県民の皆様の貴重な税金を投入させていただくことを、議員の皆様、県民の皆様に伏してお願い申し上げるところでございます。大会の開催によって必ずや多くの県民、国民の皆様に大きな感動と共感を得ていただけるものと確信しているところです。

 去る十一月十八日に最高裁判所第一小法廷において、私の上告は棄却されました。これに伴い、泰阜村と長野市の間で協議が行われ、五月十三日以前は長野市の、十四日以降は泰阜村の住民であると両首長の職権で昨日決定されました。

 生まれ育った、移り住んだコモンズで家族や隣人に見守られて天寿を全うできる環境の実現こそは基礎自治体が目指すべき最大の行政サービス、との信念に基づき、小さくとも光り輝く、否、小さいからこそ光り輝く自治体運営を先駆的に実践してこられた村の住民としてお認めいただけたことを、関係各位に静かに感謝したいと思います。

 泰阜村に対する私の愛情と敬意は今後も変わるものではありません。すなわち、村の皆様に無用のご心労やご迷惑をお掛けすることは私の本意ではありません。呻吟(しんぎん)の末、民法解釈上でも広く認められた住所複数説の観点に立ち、同じく生活の実態を有する軽井沢町へと本日付で転入させていただきますことを、この場をお借りしてお伝えいたします。

 県境には軽井沢、上高地、蓼科、野辺山、野尻湖、妻籠、そして馬籠と信州の共有財産とも呼ぶべき場所が数多く存在しています。のみならず、栄村の秋山郷、天竜村の中井侍、臼田町の馬坂、小谷村の大網をはじめとして、小集落ながらもそこには誇りを抱いてコモンズをはぐくみ続ける長野県民が暮らす場所が存在しています。視聴できるのは他県のテレビ局であり、配達される新聞の地方面も他県版であったりします。他県の学校に通う若者も居ます。が、そうした状況下においても信州人、長野県民として生き続ける人々に、私は深い感謝と畏敬(いけい)の念を抱くのです。

 私は、山口村の「越県合併」に関する対応に関し、徹夜で今朝方まで悩み、考え続けました。恥を忍んで吐露すれば、多くの担当職員への迷惑も顧みず、この提案説明も午前八時過ぎに脱稿したところです。長野県知事としての私には、たとえ、それが相対的には少数者であろうとも、長野県民であり続けたいと願う方々を守らねばならぬ責務があります。国家が、パスポートを保有する自国民に対して、その保護を約束しているように。

 集落が、そこに暮らす人々を中心として構成されるコモンズであるように、長野県もまた、自律する信州としての統一性を目指すコモンズであります。全国四番目の広さを有する県土の、いずれの地で生活する方々も、誠実で勤勉で向上心に溢れる誇るべき県民であります。そのコモンズの未来は、構成員全員の意思を踏まえて決定されねばなりません。県境や山間の地で郷土を守って暮らし、引き続き本県民でありたいと願う方々を失うことは、信州が信濃が、長野県でなくなってしまうことへとつながりかねません。

 私は悩み抜いた末、山口村の方々のみならず、すべての県境の地で、今、この瞬間も働き、学び、暮らす県民の皆様に対し、一緒に歩みましょう、一緒に踏ん張りましょう、と申し上げたく思います。同じく長野県を愛し、その長野県を繁栄させるために車の両輪として今日、ここに相集いました県議会の皆様と、この点に関し、腹蔵無き議論を戦わせていただきたく存じます。




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