6月県会 田中知事提案説明の要旨
6月23日(金)
掲載
私が知事に就任したのは2000年10月26日です。04年度には財政再建団体へと転落不可避の危機的な財政状況が続いていました。が、極めて深刻な事態へと陥っているにもかかわらず、県当局も県会も、県内のマスメディアも、危機感を共有していなかったのが実情でした。 98年度から99年度にかけての1年間で748億円も県債残高が増加していたのです。00年度にかけても91億円増え、県債残高総額は1兆6391億円に達していました。財政健全化へ歩み出すことが、私には課せられていました。幸いにして、県民の皆さまも、財政を健全化してこそ信州・長野県が持続的な地域社会たり得るのだ、とインフォームド・チョイス(情報選択)して下さいました。 県民各位のご理解とご協力の下、借入超過から返済超過へと2000年度から転換しました。基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化です。本年度当初予算も含めれば7年度連続、プライマリーバランスは黒字を達成しています。 県は、01年度に55億円、02年度に2億円、03年度に178億円、04年度に312億円と、県債残高の減少に努めてきました。05年度決算見込みの県債残高は、前年度末から376億円減少し、00年度からの5年間で累積債務は計923億円減少しました。 加えて今回の決算見込みでは、16年ぶりに財政調整のための基金取り崩し額をゼロとし、一般会計の実質収支で42億円余の黒字を確保しました。県の改革に期待して下さる全国各地の国民に対し、県民が少しく胸を張れる成果です。 が、油断は禁物です。本年度も県税収入は若干の増加が期待されるものの、地方交付税の大幅削減が想定され、一般財源の確保は依然として困難な状況が見込まれます。前人未到な努力を重ねても、09年度には財政再建団体に転落する可能性も排除し得ぬ、厳しい予測から目をそらすことなく、引き続き歩まねばならぬのです。 昨年12月、県地方公務員労働組合共闘会議に対し、給料の調整額・諸手当をゼロベースで見直しさせていただきたいと申し入れました。職務内容に応じて給与を上乗せする給料の調整額は、賞与や退職金にも連動します。5月末に合意に至った今回の見直しでは、給料の調整額99区分のうち40区分を廃止、52区分を賞与や退職金に連動しない特殊勤務手当へと振り替えることとなりました。「苦渋の決断」を、パブリック・サーバントとしての高い使命感に基づき、受け入れて下さった組合員の方々に感謝申し上げます。 6月10日から4日間、台湾を訪問し、信州・長野県の日本酒を中心としたプロモーションを行ってまいりました。100万都市である台中市を中心にスーパーマーケットを展開する裕毛屋(ゆうもうや)では、高原野菜、信州リンゴを本格的に扱っていただける運びとなりました。台湾の外交部長との会談では、県営松本空港へのチャーター便の9月就航に向け、連携を強化することで合意しました。教育部長ともお会いし、中高校生の修学旅行による交流の推進を約束いただきました。 地域づくりを自律的に志す県民の創意工夫に富んだ取り組みを支援する「コモンズ支援金」も2年目を迎えました。本年度は昨年度を大きく上回る398団体から、839件の事業申請をちょうだいしました。5月上旬までに1次分として507件、総額7億4000万円余の事業を採択しました。 県職員が自ら市町村や県民の中に飛び込み、汗をかき、知恵を出し合う「ゼロ予算事業」は、03年度から05年度までの3年間で計568事業を実施してきました。本年度は243事業を予定しております。信州発の新しい発想として、全国から注目を集めるゼロ予算事業を、より一層推進いたします。 治水・利水対策について申し上げます。浅川の治水対策に関しては「ダムを造らない新しい治水対策」を実現するべく、現在、国土交通省関東地方整備局とともに、精力的に河川整備計画を吟味しています。併せて、関係する地区の皆さまへの説明会を開催し、ご意見をちょうだいしながら、相互理解に努めております。 この河川整備計画では、今後20年間に実施する河川改修、遊水地、既存ため池の活用により、浅川流域の過去の大雨による洪水を完全に流下させることが可能となります。さらに、次期計画に放水路を加えることにより、将来目標である治水安全度100分の1を達成いたします。 国内経済の状況を見ますと、企業収益が改善し、個人消費も緩やかに増加しており、今後も国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれております。県内経済についても、産業機械向け及び自動車向けの生産が高水準で推移し、IT関連財も着実に回復し、緩やかながら着実な回復が続いております。4月の有効求人倍率は1・17倍で、昨年9月から8カ月連続で1倍を上回り、全国の中で高い水準を維持しています。 8月31日で知事2期目の任期を迎える私の信州・長野県を想(おも)う気持ちを述べさせていただきたく存じます。 図らずも県議会から不信任決議を受けて1期目の途中で失職し、再選を経て今日に至るまで、県内各地を訪れ、数多くの老若男女と言葉を交わす度、私は感じ入るのです。その誠実で勤勉で向上心に溢(あふ)れる信州人の心根に。而(しか)して、その県民が生まれ、育(はぐく)まれたのは、急峻(きゅうしゅん)なれど物さわなる信州・長野県の類(たぐ)い希(まれ)なる山河が存在したればこそなのだ、と。 私たちは、コモンズの共有財産としての信州の山河を、これから生まれ来る未来の県民、国民のためにも、護(まも)りはぐくまねばなりません。それは、信州に暮らす者に課せられた、誇るべき責務なのです。「『脱ダム』宣言」が語る精神は、脱物質主義の21世紀に生きる私たちが歩むべき社会の在り方なのだと考えます。 誇るべき県民とともに、誇るべき山河を護りはぐくみ、持続的な信州・長野県をさらに確たるものとすべく、県民の皆さまからの信託を8月6日の投票日にちょうだいしたなら、「信州から日本を変える」と五年八カ月前の知事就任当初に申し上げた気概を抱き続け、サーバント・リーダーとして県政改革を担わせていただきたく存じます。 この山河、この暮らしをはぐくみ、未来へ。誰もが誇らしく語れる、信州・長野県をさらに。 その自然を愛(め)でるべく、国内外から数多くの方々が訪れて下さる信州・長野県の知事として奉仕させていただく人生を、私に与え、支えて下さったすべての方々に感謝を申し上げます。
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