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台風10号被害 災害弱者を守らねば

 台風10号は東北や北海道で猛威を振るい、浸水などによる甚大な被害を出した。

 岩手県岩泉町では高齢の認知症患者を受け入れている施設で入所者とみられる9人の遺体が見つかった。同県ではこのほか2人が亡くなり、北海道も含めて複数の人が行方不明になっている。捜索、救助を急いでほしい。

 台風が東北の太平洋側から上陸したのは、気象庁が統計を取り始めた1951年以降初めてだ。記録的な雨が予想され、気象庁などが警戒を呼びかけていた。

 なのに、岩泉町は施設がある地域に対して避難指示や勧告を出していなかった。

 東北地方では強い台風の経験が乏しい。防災意識や備えは甘くなかったか。とりわけ、高齢者ら災害弱者の避難に関して万全を期していたのか。国や町、施設は、これらの点を検証し、今後に生かさねばならない。

 岩泉町の高齢者施設は山あいを流れる小本川の近くにある。一昨日午後7時ごろに雨はピークとなり、24時間雨量で8月1カ月分の平均雨量を超える203・5ミリを観測。施設の関係者によると、午後6時ごろには川から氾濫した水で近づくことができなかった。電話はつながらず、警察や消防に救助要請ができなかったという。

 9人が犠牲になった詳しい原因や状況はまだはっきりしない。施設は木造平屋だった。急に押し寄せた水に巻き込まれた可能性が高いとみられる。

 岩泉町は台風に備え、一昨日午後になって町内の一部地域に避難勧告を出している。が、施設のある地区は対象外で、避難指示はどこにも出さなかった。

 伊達勝身町長は「避難指示を出していれば(9人は)助かったかもしれない」と謝罪した。台風被害の深刻さをどう認識していたのか、厳しく問われる。

 今夏、台風が相次ぐのは、太平洋上に冷たい空気の固まり「寒冷渦」があるためだ。海上の暖かい空気が活発に対流することで台風の元になる熱帯低気圧を次々に生んでいる。気象庁はこの傾向がまだ続くとみている。

 岩泉町のように、山間部に家や道路が多い長野県内でも台風が直撃すれば深刻な被害が出る恐れがある。災害の専門家は、山あいの場合、予想される雨量より多くの雨が降ることを想定し、早めの避難などに心掛ける必要があると訴えている。高齢者や病人など、災害弱者の避難方法を改めて点検し、万が一に備えたい。

(9月1日)

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