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避難の情報 生かされていない現実

 災害の避難情報は十分機能しているのだろうか。岩手県岩泉町の高齢者グループホームで9人が亡くなった台風被害は避難のあり方に教訓を残した。

 情報の意味と対処の仕方を共有し、災害弱者への支援を強めなければならない。

 大雨や洪水、地震などで市町村長が出す避難の情報は「避難準備情報」「避難勧告」「避難指示」の3段階ある。

 避難準備情報は、障害や病気、高齢などで移動に時間がかかる要援護者が避難を開始しなければならない段階で出す。その他の人は非常用持ち出し品を用意するなどの準備を始める。

 「準備」という言葉で要援護者や支援者が誤解していないか。

 岩泉町は、台風接近で8月30日午前9時、避難準備情報を町内全域に出した。ホーム近くの小本川が氾濫する9時間ほど前だ。だが、ホーム入所者の避難は行われなかった。町内にはほかに行方不明になった高齢者らもいる。

 ホームの運営者は避難準備情報の意味を知らなかった。情報が住民にどう受け止められたのか。検証する必要がある。

 災害発生の恐れが高まり、住民に立ち退きを求める避難勧告と、より危険が切迫している場合の避難指示は、災害が起きるたびに発令の遅れが指摘されてきた。

 このため市町村は、判断に迷わないよう発令の基準づくりを進めた。消防庁の昨年12月時点の調査によると、水害では全国の89%の自治体が策定した。河川の水位や雨量などが判断材料だ。

 岩泉町も策定済みだった。一部地域には避難勧告を出したが、ホームのある地域には発令しなかった。町長は「いつ出そう、いつ出そうとやっているうちに(被害への)対応に追われて出せなかった」と話す。被害が出始める前に判断するのが重要だ。

 勧告・指示が適切に出たとしても安全な場所に移れなければ意味がない。厚生労働省は福祉施設に避難マニュアルの策定を求めているが、このホームにはなかった。小本川は支流も含め数年ごとに洪水が起きている。備えが甘かったといわれても仕方がない。

 施設だけでなく、地域でも要援護者の避難を支えたい。手助けが必要な人と手を貸せる近くの人、危険箇所などを地図に落としておく「住民支え合いマップ」が役に立つだろう。長野県内では約半数の市町村が管内全域で作成した。作る過程で地域の防災意識を高めることにもつなげたい。

(9月2日)

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