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斜面

「養生訓」で知られる貝原益軒は植物研究もしていた。自宅の庭に花木を植え、栽培法を細かく記した「花譜」を発刊している。元禄7年、1694年のことだ。そこに「百日紅(ひゃくじつこう)」の名と解説が本邦初登場する

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江戸初期に中国から伝来したサルスベリだ。〈六月以後八九月まで花ひらく。紅艶にして愛すべし。其間百日計あり〉。貝原のPRの効果か、各地の寺院や庭に植えられた。長野市芋井の中村集落に残る推定樹齢200年の大木も江戸後期の植栽だろうか

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市の天然記念物である。幹は根元の周囲が3メートルもある。枝葉がこんもり茂り、その先に次々と濃い紅色の花を咲かせる。住民が保存会をつくって手入れしている。2年前に花をつけなくなったが、樹木医の診断とアドバイスで追肥と枝の剪定(せんてい)をしたところ、昨年夏に見事に復活した

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帰省する人々を迎えるようにお盆ごろからが盛り。いつか目にしたいと思っていたが、花期が長いからと先延ばしにしてしまった。先日出掛けると終わりに近づいていた。例年に比べ足早という。それでも青空を背にした紅色の花は確かに「艶」があった

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芋井は長野市近郊の山里だ。中心部の標高が600メートル。周囲の田んぼは稲穂が黄色になり垂れていた。斜面の畑でたわわに実ったリンゴが赤く色づき始めていた。この秋は気が早い。来年また来て―と百日紅から声をかけられた気がした。

(9月4日)

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