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戦没者の遺骨 待つ人の元へ国の責任で

 日本政府がやり残している戦後処理問題の一つに戦没者遺骨の収集、返還がある。

 先の戦争では内外の戦場で約240万人が亡くなった。厚生労働省によると今なお約113万柱が東南アジア、旧ソ連、モンゴルなどに残っている。海底に沈んだり関係国が協力的でなかったりする場合を除いて、収集可能なのは最大約60万柱とされている。

 戦後71年が過ぎ、遺骨の場所を知る人が少なくなっている実情がある。待つ人の高齢化も進む。

 収集は時間とのたたかいだ。急がねばならない。

 政府は4月に施行された遺骨収集推進法の趣旨に沿って、手だてを尽くしてもらいたい。

 推進法は早期の収集、返還を求める遺族らの声を受け、議員立法で定められた。ポイントは「国の責務」を明記したことだ。

 戦争を起こしたのは国である。国は国民を令状1枚で召集し、戦地に送り出した。責任を持つのは当然のことだ。

 これまでは日本遺族会など民間団体任せだった。関係省庁の縦割りの弊害や予算不足による作業の遅れも指摘されていた。

 法は2016〜24年度を「集中実施期間」と定め、基本計画を作って効果的に進めるよう政府に求めている。収集作業や日本への持ち帰りを担う法人を新たに指定する。文献調査や関係国との調整も政府の仕事になる。

 今後の取り組みでポイントになる一つにDNA鑑定がある。遺骨からDNAを取り出し、遺族のDNAと照合して身元を割り出す。研究促進と鑑定態勢の整備が法にうたわれている。

 千島列島最北端のシュムシュ島で昨年見つかった遺骨が先日、北海道小樽市の遺族に返還された。ポツダム宣言を日本が受諾した後に旧ソ連軍が上陸し、激戦が行われた島である。DNA鑑定により、この島で見つかった43柱の中で初の身元判明になった。

 80代の兄は「遺骨は経年劣化しており、鑑定は難しいだろうと言われていた。科学の進歩のおかげで身元を特定してもらえてうれしい」と話している。

 政府はこれまで、遺体の近くで印鑑や旧日本軍の認識票が見つかるなど、身元がある程度推定できる場合に限って遺族のDNAとの照合を行っていた。

 DNAの技術は日々進んでいる。一層の活用を考えたい。希望する遺族から提供してもらい、データベース化して照合することを検討してもいいだろう。

(9月5日)

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