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対ロシア外交 期待だけでは語れない

 互いに融和姿勢を演出したけれど、北方領土問題など、日本とロシアの懸案解決につながる道筋は見えてこない。期待だけで語るわけにはいかない。

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領がウラジオストクで行った会談である。

 12月に大統領が来日し、15日に首相の地元の山口県で会談することで合意した。5月に首相が提示したロシア側の経済発展につながる8項目の協力案についても、推進することを確認した。

 日本側が領土交渉の進展を待たずに本格的な経済協力を先行させる意思を示したことになる。領土問題にかたくななプーチン氏が軟化することを期待しているとみられるが、目に見える進展が得られる保証はない。

 プーチン氏に主導権を握られたまま、日本が振り回されることにならないか。

 安倍首相が切った外交カードがプラスとなるか、マイナスとなるか、予断を許さない。

 ロシア大統領の訪日は、国際会議に合わせた場合を除くと11年ぶりのことになる。今回の首脳会談では訪日前の11月、ペルーで開く国際会議の際にも会談することを確認している。

 日本とロシアは第2次大戦後、領土問題が足かせとなり平和条約を結べないままとなっている。両国の間で繰り返してきた緊張状態の要因ともいえる。

 安倍首相は首脳会談翌日の「東方経済フォーラム」で、日ロ首脳会談の定期化も提案している。

 アジアの安定のため、両国の首脳が対話を重ね、良好な関係を目指す姿勢に異存はない。目を凝らさねばならないのは、双方の政治的な思惑である。

 ロシアはウクライナ危機などを巡り欧米と対立を深めた。日本への接近は日米の同盟関係にくさびを打ち込むと同時に、安全保障や経済面でアジア進出の足掛かりにしようとの狙いが透ける。

 プーチン氏はフォーラムで「領土問題で妥協できるという例を示すことができれば」と述べた。現実には日本が帰属確認を求めている北方四島のうち、択捉、国後両島で軍関連施設の整備を進め、実効支配を強めている。日本から経済協力を引き出すことに軸足があるとみた方がいいだろう。

 安倍首相には北方領土問題への取り組みを、求心力の維持や長期政権実現のために利用する考えがあるはずだ。プーチン氏の訪日でどんな成果を出せるか。首相の重い宿題となった。

(9月5日)

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