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認知症見守り 足元の支えを強めよう

 認知症の人の一人歩きに対し「徘徊(はいかい)」という言葉を使うのをやめる自治体や団体が増えている。

 あてもなく歩き回るという意味の言葉が誤解や偏見を招く。ともすれば「閉じ込めておかなかった」と、家族や施設が非難される。

 本人は誰かに会おうとしたり、何かの用事を足そうとしたりと目的を持っている―。認知症を理解し、その意思をできる限り尊重する見守り活動を広げたい。

 認知症の行方不明者は昨年、警察が把握しただけで全国で1万2千人余。長野県は122人いた。高齢化の進行とともに増え続けるとみられる。悲劇を招かないための対策は待ったなしだ。

 一人歩きは、時に市町村の境を越える。電車に乗って移動し、遠隔地の自治体に保護されるケースも少なくない。市町村によって見守り、発見の活動に大きな差があっては救えない場合が出てくる。

 このため厚生労働省は広域の見守りを強化することを決めた。

 発見や通報などの模擬訓練を複数の自治体で共同実施したり、地域の課題を共有する会議を都道府県が開いたりする場合に費用を補助する。来年度予算の概算要求に約5600万円を盛り込んだ。

 ただ、地域に認知症の人を支える基盤がないとお金は生きない。

 自治会や住民、消防、警察などによる「見守りネットワーク」を組織しているのは、長野県の場合、15市町村(昨年7月現在)にとどまる。

 整備を急がなければならないが、組織ができればいいというものではない。多くの人が認知症を理解し、適切な対応が取れるようにすることが大切だ。

 「認知症の人が安心して外出できる町」を掲げる福岡県大牟田市がまず取り組んだのは、認知症の啓発を進めることだ。10年以上前からコーディネーターの育成や小中学生への絵本の読み聞かせを続けている。

 一人歩きの高齢者への声かけが日常になり、近所の中学生が自発的に付き添う光景も見られるという。行方不明者の情報伝達や保護の模擬訓練には市内全域から3千人が参加するまでになった。

 認知症の高齢者は500万人を超え、9年後の2025年には約700万人に達するとされる。このほか若年性認知症の人も約4万人に上ると推計される。

 誰でもなり得る病気だ。自分がなったら、どうしてもらいたいか。それを考えることが支え合いを広げることにつながる。

(9月6日)

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