長野県のニュース

斜面

中国・杭州はかつて南宋の都として栄えた。世界遺産の西湖に面し国内屈指の景勝地でもある。多くの詩人が風光明媚(めいび)をたたえ、宋代の蘇軾(そしょく)は絶世の美女・西施(せいし)に例えた。化粧が薄くても濃くてもよく似合う西施のように、西湖は晴れでも雨でも素晴らしい

   ◆

13世紀に訪れたイタリア人、マルコ・ポーロも魅了された。口述録「東方見聞録」では、間違いなく世界第一の豪華・富裕な都市―と述べている。何でもそろう市場があり、街路と運河が発達し、市民はどこへも自由に行ける―と

   ◆

この古都できのうまで20カ国・地域の首脳会合が開かれた。近年の開催地は警備しやすいリゾートが多い。約900万人の大都市を選んだのは習近平国家主席の意向という。地方の成長が鈍る中で先端企業が集まる杭州は元気がいい

   ◆

電子商取引最大手のアリババグループも本拠を置く。かつて主席がトップを務めた地だけに実績を誇り内外に「威信」を示したかったようだ。けれどマルコ・ポーロが「自由に往来できる」と称賛した街は警備のため一変した。その強権ぶりには目を見張る

   ◆

政府機関や学校は1週間休みとなり、市民は外出を控えるか旅行に行くよう促された。環境対策で多くの工場が止まり、人が集まる大型店も閉まった。さぞ迷惑だったろう。とかくトップの威信が幅を利かす社会は息苦しい。外にもいい印象を与えることはない。

(9月6日)

最近の斜面