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バス事故対策 社会のひずみたださねば

 安全をなおざりにするバス事業者への罰則を強めることは、事故防止の一歩になる。ただ、それで事が足りるわけではない。業界が抱える構造的な問題に踏み込まなければ、再び惨事が起きる心配は消えない。

 大学生ら15人が死亡した軽井沢のバス転落事故を受けて、政府は道路運送法の改正案を26日召集の臨時国会に提出する。現在は無期限の事業許可を原則5年の更新制に改めるほか、悪質な業者への罰金を大幅に引き上げる。

 運行管理に関わる国の改善命令に違反した場合の罰金は、現行は「100万円以下」だ。これを鉄道や航空会社と同じ「1億円以下」とする。経営者や運行管理者ら個人の罰則も重くする。

 悪質な業者を排除する効果は一定程度見込めるだろう。とはいえ、事故の背景には、業界の過当競争や運転手の過重労働といった根深い問題がある。

 軽井沢で事故を起こしたバス会社は、国の基準による適正運賃を大幅に下回る額で旅行会社から運行を請け負っていた。このバス会社に限らず、基準割れでの受注は業界で横行しているという。

 コストを切り詰めようと運転手の賃金は抑えられ、なり手が慢性的に不足して長時間労働など労働条件の悪化につながっている。年間労働時間は全産業の平均より300時間以上も長い。

 高齢化も目立ち、60歳以上が2割近くを占める。65歳の運転手が深夜に長距離の運転をして起こした軽井沢の事故は、業界の実情を映し出した。

 亡くなった大学生の父親が通夜で語った言葉が思い起こされる。「事故は過度な利益追求や安全の軽視など、社会のひずみによって発生したように思える」

 国が貸し切りバス事業の規制を緩和したのは2000年。免許制から許可制に変わって新規参入しやすくなり、業者は倍増した。市場競争で運賃は下がり、格安料金のバスツアーが増えた。

 その一方で、立場の弱い運転手がしわ寄せを受け、大事故が繰り返し起きている。12年に群馬県の関越道で7人が亡くなった事故は、運転手が過労で居眠りをしたのが原因だった。事故のたびに場当たりの対応をしても、根本の問題はなくならない。

 バスの運行は人の命を預かる仕事だ。運転手の労働環境を守ることは乗客の命の安全に直結する。そのことを再認識し、業界の労働実態の是正に向けて実効性ある対策を取ることが欠かせない。

(9月8日)

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