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火山研究 優れた人材育てるために

 火山研究者が長年待ち望んだことに、ようやく最初の一歩が踏み出されそうだ。

 文部科学省が「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」の概要を発表した。2年前の御嶽山噴火で研究体制の弱体化と人材不足が指摘されたことを受けての事業である。

 プロジェクトは研究と教育の2本柱から成っている。研究では、▽先端的な観測技術の開発▽噴火予測技術の開発、といったテーマが並ぶ。実際に携わるのは防災科学技術研、九州大など研究機関や大学だ。研究者は歓迎していることだろう。

 教育は「火山研究人材育成コンソーシアム」が軸になって進める。コンソーシアムとは、幾つかの団体が集まって共同事業を行う組織のことである。東北大学が軸になり、北海道大、東京大など計8大学が参加する。

 文科省によると、全国の大学の火山研究者は合わせて47人しかいない。教える側も人材が足りない現実がある。共同組織で教育に当たるのはいい考えだ。

 プロジェクトは10年間をめどに進める。初めの5年間で大学を含めた全国の研究者を今の約2倍、160人にすることを目指す。確かな成果を期待する。

 問題もある。育てた研究者のポスト確保に不安が残ることだ。

 厳しい財政事情で国立大の教員数は減らされたままだ。火山を勉強しても就職口がないようでは優れた人材は集まらない。

 プロジェクトの全体を統括する藤井敏嗣・東大名誉教授は以前から国立火山研究所の必要性を指摘している。米国、イタリア、インドネシアなど火山を抱える国には国立の機関があり、研究や監視をしているのに、世界有数の火山国である日本に研究所がないのはおかしい、と。

 24時間態勢で火山を監視し、異常をいち早く見つける。各地の火山の特徴を調べ、ハザードマップ作りを支援する。自治体職員らの研修をする―。

 研究所に期待したいことはたくさんある。実現して存在感を発揮すれば、若い才能がこの分野を見る目も変わるはずだ。

 プロジェクトには本年度6億7千万円の予算が盛られている。9次にわたる予知計画で3千億円が投じられた地震研究に比べれば控えめな額とも言える。

 今度のプロジェクトを突破口に、気象庁、国土交通省など他の関係省庁も含めた体制の強化につなげていきたい。

(9月9日)

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