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リニア説明会 誰の理解が進んだのか

 誰の理解が進んだというのか。都合の良い解釈を続ける限り、住民との信頼関係は築けないだろう。

 JR東海が下伊那郡大鹿村で開いたリニア中央新幹線の工事説明会である。南アルプストンネルの長野工区(約8・4キロ)について、日程や工事内容、自然や生活への影響対策などを示した。作業用トンネル坑口(非常口)の準備工事を今秋の中ごろから始めるとしている。

 JRは説明会終了後、「説明会を通じて理解が進んだと考えている」との認識を示した。工事用車両の通行時間帯などに対する具体的な要望が出たことなどで判断したという。

 約3時間半に及んだ説明会では、住民から質問が相次いだ。

 生活圏を避ける迂回(うかい)ルートの運用を始める2018年度までは、1日最大68台の工事用車両が村中心部を走る。JRは「1年間は我慢しろというわけではないが、受け入れてほしい」と要望。ある住民は「迂回ルート完成まで通らせないでほしい。我慢するのはJR東海のはずだ」と異議を唱えた。

 トンネルから排出される約300万立方メートルの残土の処分場所が決まる前に着工することへの疑問も根強い。迂回ルートが完成した後は、最も多い時期で1日約1350台の工事用車両が県道などを走る影響への質問も目立った。

 どんな工事が実施されるのか理解することと、納得することは違う。工事の内容に不信感を強める住民も多い。納得が得られるかどうかは今後のJRの対応次第と考えるべきだ。

 不信の根本には、理解を得たかどうかはJRが判断する考えを何度も示していることがある。説明会が理解を得たという既成事実になり、着工につながることへの懸念が強い。

 説明会では中学生女子が「リニアはやめてほしいという気持ちが(JRに)伝わらないのに、説明会に来ると(JRは)理解されたと言っている。私は意味が分からない」と率直な疑問をぶつけた。

 JRは「推進したいという意見も多くいただいている。両方の意見を聞いていきたい」と述べた。それなのに説明会後に「理解が進んだ」と発言していては、住民の納得は得られない。

 住民の暮らしは10年以上にわたって影響を受ける。豊かな自然環境を求め、都会から移り住んだ人も多い。JRは説明会で「工事着手の見極めは事業者に課せられた義務だ」と強調した。不安に真摯(しんし)に向き合うことも義務である。

(9月9日)

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