長野県のニュース

斜面

芳醇(ほうじゅん)な香りと上品な甘みの果肉は歯応えがよく、皮ごと食べられる。人気のブドウ、シャインマスカットだ。ネット上で公開されている品種開発の論文を読むと、その特長を備えるまでの試行錯誤が伝わる

   ◆

1988年、当時の農水省果樹試験場が欧州ブドウなどを交配。育苗や試験を重ね、新品種の登録をするまで18年かかった。研究者の苦労が報われたのだろう。栽培が広がっている。中でも信州は全国一の産地に育った。輸出増の期待も高い果樹の一つだ

   ◆

日本から持ち出せない苗木が中国で販売されているという。「陽光玫瑰(Shine Muscat)」の名で宣伝している。「無断でけしからん」とこぶしを振り上げたいところではあるが対抗措置には踏み切れない。中国で品種登録をしていないからだ

   ◆

新品種を育成し登録すれば、「育成者権」を与えられる。その許諾なしに種苗を業として利用できないが、海外への登録は条約で出願に期限がある。果樹は国内販売から6年以内だ。シャインマスカットは農水省所管の農研機構が期限内に出願しなかった

   ◆

TPPをにらみ農産物輸出を増やしたい政府は海外登録を支援する方針を打ち出した。そのコストと手間に見合うメリットはあるのか。新品種を次々開発している信州も思案のしどころだ。

(9月9日)

最近の斜面