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シリア内戦 人道重視で和平の道筋を

 内戦が長期化しているシリアで停戦期間が始まった。アサド政権を擁護するロシアと、反体制派を支援する米国が全土での停戦で合意したことによる。

 2月の一時停戦は政権軍が過激派掃討を理由に反体制派を攻撃して戦闘が再燃。それまでと同様、停戦は長続きしなかった。

 激戦地の北部アレッポでは民間人の死傷者が増え続けている。内戦が本格化して4年以上。市民を含めて27万人以上とされてきた死者は40万人を超えた、との指摘もある。深刻な人道危機だ。

 米ロが中東への影響力にこだわるあまり、戦闘が泥沼化していった面が否めない。国際社会は人道重視を最優先とし、支援を急ぐ必要がある。今度こそ確かな停戦を実現してほしい。

 米国のケリー国務長官とロシアのラブロフ外相がジュネーブで14時間にわたって断続的に協議し、合意に至った。柱はアサド政権に対し、国際テロ組織アルカイダ系組織への攻撃と称する反体制派への空爆を禁じたことだ。

 両国が軍や特殊機関の要員でつくる合同センターを立ち上げる。過激派組織と穏健な反体制派を区別した上で、過激派に対する攻撃を調整するのだという。

 ケリー氏は「市民の居住地域への無差別爆撃をやめさせることになる」と意義を訴えた。

 しかし、過激派組織と反体制派の支配地域は入り交じっている。攻撃対象を過激派だけに絞ることができる保証はない。

 今回の合意は五つの文書からなると説明された。機微な内容が含まれるとし、詳細が非公開とされたことも気になる。

 停戦を確かなものにするには米ロの協調が欠かせない。内戦が周辺国も交え、大国の代理戦争の様相を強める中、どこまで本気なのかが見えてこない。

 何より、問題なのは和平への道筋が示されていないことだ。米ロは3月、この夏までにシリア移行政権の樹立と新憲法草案を策定する方針で一致していたはずだ。シリア和平の国際会議でも移行政権について合意している。

 アサド大統領の処遇も含め、今回の米ロ合意からは肝心な点が分からない。米政府は表向きは大統領の退陣を求めるものの、延命を容認する姿勢に転じたとの見方も出ている。シリアから手を引く準備を始めたとの見立てだ。

 停戦を維持し、和平協議を軌道に乗せることが国際社会に課せられた仕事だ。米ロの責任と覚悟が厳しく問われる。

(9月13日)

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