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安保をただす 首相の訓示 任務拡大はなお疑問が

 自衛隊高級幹部会同で安倍晋三首相が訓示した。北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射を非難するとともに、安全保障関連法に基づく自衛隊の任務拡大に意欲を示している。

 安保法は19日で成立から1年になる。違憲性や必要性など多くの疑問がなお残ったままだ。日本を取り巻く状況が厳しさを増しているとの理由を押し立て、安保法の本格運用に一気に踏み出そうとしている。政府の姿勢を厳しく見ていきたい。

 自衛隊の制服組トップの統合幕僚長や陸海空の幕僚長、部隊の長ら幹部が出席する会合だ。最高指揮官である首相が訓示し、方針の周知徹底を図る。

 首相は北朝鮮について「わずか9カ月の間に2度にわたって核実験を強行した。断じて容認できない」とした。「国際社会の非難の声を無視し、弾道ミサイルの発射も繰り返している。前例のない事態だ」と指摘している。

 「軍艦による領海侵入、相次ぐ国籍不明機による領空接近。これが現実だ。極めて厳しい状況に直面している」とも述べた。中国などが念頭にあるのだろう。

 自衛隊の海外任務を広げる安保法については「積極的平和主義の旗を高く掲げ、世界の平和と安定にこれまで以上に貢献する。今こそ実行の時だ」と語っている。

 安保法制定に際して安倍政権は北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出を引き合いに出し、法整備によって日本を守る抑止力を高めると主張してきた。事態は好転するより、むしろエスカレートしている感がある。

 抑止力一辺倒では、さらに軍事力増強を招く悪循環が進むのではないか。北朝鮮の核・ミサイル開発や沖縄県・尖閣諸島を巡る中国との対立は本来、安保法とは別の問題だ。

 憲法違反と指摘される集団的自衛権の行使容認をはじめ、安保法の問題点は解消していない。

 稲田朋美防衛相は先月下旬、安保法施行に伴う自衛隊の新たな任務のほぼ全てについて訓練に着手すると表明した。きのうの会合でも「任務遂行のための能力を高める努力を不断に行い、あらゆる事態に適切に対応できるよう万全を期す」と述べている。

 このまま任務拡大へ突き進むわけにはいかない。26日に召集される臨時国会で各党は是非を問い直す必要がある。

(9月13日)

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