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夏山遭難 無理をしない 転ばない

 7、8月の2カ月間で107件―。

 今年も高水準のままとなった。県内の夏山遭難である。

 5年続けて100件を超えた。遭難者は110人。9人が亡くなった。

 昨年1年間では58人が亡くなっている。昨年の県内の交通事故死69人と比べても深刻さが分かる。

 無理のない計画を立てる。天気が悪いときは動かない。

 すべての登山者がこの2点を守るだけでも、遭難は大きく減るだろう。危険を肝に銘じて、悲劇を1件でも減らしたい。

 山域別では北アルプスが7割近くを占めた。岩場が多い山々だ。発生状況では、転滑落と転倒で約6割となっている。

 岩場での転滑落、転倒に気を付ける。これが信州の夏山遭難防止のポイントと言っていい。

 日ごろ登山を楽しんでいる人なら、転滑落や転倒がどんなとき起きやすいか経験的に知っている。疲れたとき、天気が悪いとき、そして下山するときだ。

 疲れてくると知らず知らずのうちに、踏み出す足が上がらなくなってくる。靴を岩角にぶつける危険が増す。雨が降ると足先まで気が回りにくくなる。岩が滑りやすくもなる。下山の時につまずくと転落に直結する。

 過去の遭難の写真を見ると、特に危険とも思えない場所での事故が少なくない。肝を冷やすような場所を過ぎてほっと一息つくときが危ない―。山のベテランは口をそろえる。登山口に着くまで気を抜かないことが肝要だ。

 9月に入り、穂高連峰の登山道「ザイテングラート」での事故が続いた。涸沢から稜線(りょうせん)に向け一気に突き上げる尾根道だ。

 北アの代表的な登山道の一つである。急ではあるけれど、はしごや鎖が完備されている。落ち着いて登れば問題ないはずだ。なぜ事故になったのか、よく分からないのがもどかしい。

 中高年の遭難が相変わらず多い。7、8月の遭難者のうち約7割が50代以上だった。

 中高年登山者と話をすると、多くは若いころ山に目覚めた人たちだ。昔取ったきねづかで今も山に来ている。これからも登り続けてほしいと思う。

 ただし体力は年々低下する。バランス感覚も鈍くなる。無理のない計画は中高年登山者にこそ必須の心掛けだ。

 山は多彩な顔を持っている。小さな山には小さいなりの良さがある。自分の体力と相談し登る山を選んで、長く楽しんでいこう。

(9月14日)

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