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今から85年前の1931年のきょう。日本が進出していた満州(中国東北部)の柳条湖で南満州鉄道の線路が爆破された。駐屯していた日本陸軍の関東軍は、これを中国軍の仕業として軍事行動を始める。満州事変である

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日本が中国との全面戦争、太平洋戦争と15年にわたる戦争に突き進み、破局へと向かう発端になった。爆破は満州を中国の主権から切り離し、日本の勢力下に置こうとした関東軍が自ら起こした謀略だった。そのことは終戦まで国民に知らされなかった

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高校の日本史教科書(山川出版社)を開くと、「世論・マスコミは戦争熱に浮かされたかのように軍の行動を支持した」と書かれている。時の内閣が不拡大の方針を示したのに、関東軍が戦線を拡大した背景には世論の後押しもあった

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もし真相が伝わっていたら歴史は違っていたかもしれない。満州に派遣され、「謀略」と知った新聞記者もいた。だが〈つゆほども紙面にあらわれなかった〉(池田一之著「記者たちの満州事変」)。当時の記者たちの証言によると、新聞各社では関東軍の暴走に対する社内の論議さえなかったという

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先月、101歳で亡くなったジャーナリストむのたけじさんの言葉を思い出す。憲兵が直接、新聞社に来て取り締まったことはなく「自分たちで縛っていた。戦わずして殺されていた」。自戒をこめて記憶したい歴史の教訓だ。

(9月18日)

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