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日銀の転換 異次元の限界が見えた

 異次元緩和の限界がはっきりしてきた。日銀が資金供給の「量」を重視する手法から、「金利」誘導を柱とする政策へと大きくかじを切った。

 デフレ脱却のため「2年で物価2%上昇を実現する」とした目標は、黒田東彦総裁が大胆な金融緩和を始めてから3年半もたつのにめどが立たない。

 政策のもとにあるのは、市中に出回るお金の量を増やせば物価が上がるという「貨幣数量説」の考え方だ。「リフレ派」と呼ばれるメンバーで中枢を固め、金融機関から大量の国債を購入することで巨額の資金を供給してきた。

 空振りだった「量」の効果。それでも日銀は今回実施した政策の総括的な検証で、物価が上がらない理由を▽原油価格の下落▽消費税引き上げ▽新興国経済の減速―の外部要因に求め、資金供給も続ける強気の方針を決めている。

 消費税は当初から分かっていたこと。食い足りない総括だ。

 すでに日銀は全体の3分の1を超す国債を買い占めた。事実上、国の借金を引き受ける形で財政規律を緩ませている。株式市場を支える巨額の上場投資信託(ETF)購入も株価を左右し、市場をゆがめている。間接的に日銀が大株主になる企業が増えた。異常な市場の姿は自由主義経済とは言えない状態である。

 そもそも国民には、なぜ日銀が物価にこだわるのかが見えてこない。将来物価が上がると思うようになるには、賃金が上がり、景気が良くなると実感できてこそだろう。企業収益が増えても賃金への還元は不十分で、むしろ実質賃金は下がる傾向にあった。

 今度の金利重視への転換は、量の限界とともに、2月のマイナス金利政策導入による副作用が大きく批判が強いことがある。金利が一様に下がり、金融機関は利ざやが稼げず、年金運用にも支障をきたした。日銀は国債購入の工夫で長期と短期の金利差を広げ、金融機能の回復を狙う。

 しかし中央銀行が長期金利をコントロールするのは至難の業とされる。実効性は不透明だ。

 これまでの黒田総裁の手法は予想外の政策によって効果を狙い、「サプライズ緩和」と呼ばれた。限界が見えた今後は、市場と情報を共有し対話を重視する本来の中央銀行の姿勢が求められる。

 国債とETFの購入で日銀の含み損は増える一方だ。危機となればツケは国民負担になる。緩和縮小の出口戦略まで見据えた論議が必要な段階になっている。

(9月22日)

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