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農相の発言 撤回では済まされない

 山本有二農相が「冗談」発言について国会で謝罪、撤回した。環太平洋連携協定(TPP)の承認案などを巡る「強行採決」発言に重ねての失態だ。

 巨大与党の数の力を背景にした政権のおごり、緩みが一連の経過に端的に表れている。取り消せば済むという問題ではない。

 1日の自民党議員のパーティーでの発言である。「こないだ冗談を言ったら(閣僚を)首になりそうになった」と述べた。

 森喜朗元首相から「パーティーに行って冗談を言うなよ」と電話で注意を受けたと紹介し、「これ以上、要らないことを言ってはいけない」と続けている。

 10月中旬に佐藤勉衆院議院運営委員長のパーティーで、TPP承認案などの衆院審議を巡り「強行採決するかどうかは佐藤氏が決める」と発言、批判を受けて撤回した経緯がある。これを自ら持ち出し、軽口をたたいた。

 国会の賛同を得られるよう省庁のトップとして説明を尽くし、理解を求めるのが本来の姿だ。強行採決をほのめかすような発言は国会軽視と言わざるを得ない。野党だけでなく、与党も厳しく抗議すべき発言である。

 山本氏はきのう、TPPの衆院特別委員会で「不用意な発言により、再び大変ご迷惑を掛けたことを心からおわび申し上げる。謹んで撤回させていただく」と述べている。「職責を全うするため誠心誠意、努力を重ねていきたい」と辞任は否定した。

 菅義偉官房長官は「軽率な発言をしたと深く反省しており、辞任するような話ではない」と述べている。どこを問題と考え、何をどう反省したのか、山本氏は国会できちんと説明すべきである。

 「冗談」発言のパーティーで山本氏は「JAの方は明日でも農林水産省に来れば、何か良いことがあるかもしれない」とも語っている。野党は「利益誘導政治」などと批判する。どんな良いことがあるというのか、この発言についても意図を詳しく聞きたい。

 TPPの採決日程で自民党と合意していた民進党は、農相が辞任しない限り審議に応じない方針に転じた。特別委は民進、共産両党が退席し、自民、公明両党などの賛成多数で可決している。

 議論が深まらないまま、農相の発言を巡る混乱の中で採決が強行された。慌ただしく承認する必要があるのか、仮に発効した場合はどんな影響が出るのか…。多くの疑問が残っている。与党は衆院通過を急いではならない。

(11月5日)

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