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斜面

晩秋から初冬にかけのこの時季は山城巡りが楽しい。足元を覆う草は枯れて道が歩きやすくなる。木々は葉を落とし遠くの山まで見通しが利く。夏と違って汗もかかない

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信濃は山城が多い国の一つとして知られている。群雄割拠する豪族が外敵の侵入に備え居館の裏山に砦(とりで)を築いた。県立歴史館のブックレット「山」に当時の様子を伝える文書が紹介されている。本能寺の変の後、越後・上杉氏の家臣2人が松本盆地周辺の状況を記した書状である

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「信濃の者たちはみな、小屋揚(こやあ)がりして大混乱している」といった意味のことが書いてあるという。小屋は山城のことだ。信濃を支配してきた信長の死後、どっと攻め入ってきた上杉、北条や徳川に対し安曇野の人びとは山城にこもって立ち向かったのだ

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小さな砦を頼みに巨大勢力に対抗しようとした姿が目に浮かぶ。殺されたり、抵抗を断念して惨めなその後を余儀なくされた者も多かった。郷土史研究の故小林計一郎さんはそんな信濃の豪族が歩んだ道を「哀史」と言い表している。山城を訪ねると、土塁を築き空堀を掘った雑兵たちの労苦がしのばれる

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城はふつう山の頂上か尾根の突端に築かれる。見晴らしはいい。中でも最高の一つは坂城町の三水(さみず)城だろう。眼下を流れる千曲川からの標高差は400メートル。佐久平から善光寺平まで飛行機から見下ろすような眺めが楽しめる。

(11月6日)

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