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パリ協定発効 世界に取り残される

 温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」が発効した。温室効果ガスの排出量を今世紀の後半に「実質ゼロ」にすることを目指す。

 世界気象機関(WMO)は10月下旬、二酸化炭素(CO2)などの2015年の世界平均濃度が、過去最高を更新したと発表した。温暖化の進行を少しでも早く止めねばならない。

 協定の発効は、世界が危機感を共有し、脱炭素社会の実現に向けて示した決意といえる。

 米国や中国、欧州連合(EU)などに比べ日本の対応は遅れた。4日の予定だった衆院本会議での批准案承認も先送りされた。15日にモロッコで開かれる初の締約国会議には、議決権がないオブザーバー参加しかできない。

 世界5位の排出国として責任ある対応ではない。国際社会での存在感や信用力の低下につながる。政府は猛省するべきだ。

 協定の目的は、18世紀半ばの産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度未満に抑えることだ。各国の現在の目標では達成できない。

 中でも「2030年に13年度比26%減」という日本の目標は低すぎる。基準とする13年度は、東日本大震災の影響で温室効果ガス排出量が高まった時期だ。1990年度比では18%減にすぎない。早急に新たな対策を導入して、目標を大幅に高めなければならない。

 国内産業界の危機感も薄い。電力業界が象徴的だ。再稼働が難しい原発の埋め合わせとして、コストが低い石炭火力発電所の新増設計画が相次ぐ。温室効果ガスの増加につながる。再生可能エネルギーの普及に取り組むのが筋だ。

 EUは30年に発電量の45%を再生可能エネルギーにする目標を掲げている。コストは下がりつつあり、新興国でも拡大している。日本は世界に逆行している。

 世界では企業の排出量に削減義務を課し、排出枠を取引して削減を進める排出量取引制度が広がり始めている。EUや韓国などが取り入れているのに、経団連は消極的な姿勢のままだ。

 世界の機関投資家には、化石燃料を扱う企業を投資先として「ハイリスク」とみなし、資金を引き揚げる動きも出ている。石油や石炭の大量消費を前提とするビジネスは、温暖化を加速するだけでなく、将来的に経営が行き詰まる懸念があるという判断だ。

 日本は取り残されかねない。政治や企業だけでなく、一般家庭も意識を改革して、社会全体で新たな一歩を踏み出す必要がある。

(11月7日)

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