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長時間労働 上限を設け罰則強化を

 女性新入社員が過労自殺した問題で、東京など各労働局が電通を強制捜査した。

 30人を超える社員が1カ月の残業時間を実際より100時間以上少なく、会社に申告していたことも分かった。労使協定で決めた残業時間の上限を超えていないように装っていたとみられる。女性新入社員の遺族も、会社から残業時間を実際より少なく申告するよう指示されたと主張している。

 違法な「残業隠し」が全社的に行われていたとすれば悪質だ。電通では過去にも過労自殺が起きている。その教訓を生かさず、長時間労働を社員に強いていたのか。問題は根深い。

 厚生労働省は法人としての電通や労務・人事系の担当者らを労働基準法違反で書類送検する方針だ。実態を解明して責任を明確化し、再発を防ぐ必要がある。

 同社だけの問題ではない。厚労省の昨年の調査では、長時間労働が疑われる全国8500事業場の半数超で違法な時間外労働が確認されている。

 現場をチェックする労働基準監督官の不足が原因の一つだろう。監督官は全国に約3千人だ。全国の企業を巡回して違反がないか確認するのは無理がある。

 長時間労働を是正するには、労基法の改正が必要だ。現在は労使協定で決めた以上の残業をさせても、罰則は6月以下の懲役か30万円以下の罰金のみだ。さらに労使協定に繁忙期などを想定した「特別条項」を付ければ、年6カ月間は残業時間が青天井になる。

 労基法を改正して残業時間の上限を法定化し、罰則を強化しなければならない。実際の労働時間を改ざんした企業には、より厳しく対応するべきだ。実態を社員が外部に訴えられる通報制度も充実させる必要がある。

 政府は「働き方改革」に向け、有識者らでつくる実現会議を9月末にスタートさせた。長時間労働の抑制策は議論の柱になる。実効性ある対策を政府に求める。

 経済界には残業時間に一律に上限を設けることに対し、「人手不足の業種に配慮が必要」として、慎重な意見が根強い。人手が足りないことは、無制限の残業を容認する理由にはならない。賃金を上げるなど労働環境を改善して、業務量に合った人員を確保するのが筋である。

 問題なのは、生活や健康を犠牲にした長時間労働を当然視する価値観が一部にあることだ。政治や企業だけでなく、社会の一人一人が意識を高める必要がある。

(11月9日)

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