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経済かじ取り 政策練り直しの議論を

 過激な保護主義政策を掲げるトランプ氏が米大統領選で勝利したことを受け、市場が乱高下した。

 9日の東証の日経平均株価は一時1000円超下落した。きのうは大幅上昇に転じている。

 背景には、トランプ氏の経済政策が不透明なことがある。

 選挙戦では、環太平洋連携協定(TPP)からの脱退を宣言した。米国がカナダやメキシコと結ぶ北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉にも触れた。

 日本や中国は自国通貨を安値誘導していると主張。中国や日本、メキシコからの輸入品の関税を引き上げる構えも見せる。

 こうした政策は危険性をはらんでいる。戦前に広がった保護主義は経済を萎縮させて国際的対立を招き、大戦につながった。

 トランプ氏の経済政策は、戦後の国際経済の発展を支えた自由貿易体制に深刻な打撃を与えかねない。世界経済の混乱も招き、減速に拍車が掛かるだろう。

 勝利直後の演説では過激な発言はせず、市場の混乱は収束した。就任後には現実的な政策を進める可能性はある。それでもオバマ政権が進めた通商政策を、ある程度は覆すとみた方がいい。

 代表的なのはTPPだ。トランプ氏は10月下旬の演説で、米国の製造業が深刻な打撃を受けるなどとして、来年1月20日の大統領就任日に「TPP脱退を表明する」と強調している。勝利を支えた政策の一つだ。簡単には軌道修正しないと考えねばならない。

 米議会で過半数を占める共和党の上院院内総務も、オバマ政権が目指すTPPの年内の議会承認を見送る考えを表明した。発効には米国議会の承認が不可欠で、可能性はゼロに近い。

 米国が保護主義的政策を進めて貿易が収縮すれば、国内の輸出系製造業を直撃する。賃金や雇用にも影響が広がり、経済成長は困難になる。安倍晋三政権が進めてきた経済政策アベノミクスは見直しを迫られよう。

 与党と日本維新の会はきのう、TPP承認案と関連法案を衆院本会議で強行採決した。政府が成長戦略と位置付けてきたTPPは、もはや「死に体」である。採決を急ぐ理由はない。政府と与党は対応策を見いだせず、混乱状態に陥っているのではないか。

 大統領選の結果が外交や経済に与える影響を、まずは見極めるべきだ。政府と国会で政策の練り直しに向けた議論を早急に始めなければならない。

(11月11日)

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