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米大統領選 メディアに課題を残す

 大統領選挙の結果が米国メディアを揺さぶっている。主要新聞、テレビの多くが国民の支持動向を読み誤り、トランプ氏勝利を予測できなかったからだ。

 間違えた原因には、世論調査に対し誰を支持しているか答えない層が多かったことが挙げられる。“隠れトランプ派”だ。それはメディア不信の広がりの裏返しでもあるだろう。

 読者、視聴者との距離をどう縮めるか。日本のメディアにも共通する課題である。

 米紙の多くは選挙でどの候補を支持するか明らかにする。大統領選でも同様だ。

 今回はクリントン氏を支持した新聞が圧倒的に多い。トランプ氏を当選させてはいけないとネガティブキャンペーンのような報道を展開した新聞もあり、多くが候補者の一方に肩入れする特異な報道になった。

 情勢報道では序盤から終盤に至るまでクリントン氏有利を伝えるメディアが多かった。

 トランプ氏は選挙戦では、イスラム教徒の入国禁止やメキシコ国境への壁建設を主張していた。自由、平等の近代的価値観とは相いれない考えだ。そのまま実行できるとも思えない。

 氏は女性蔑視発言でも批判されていた。新聞の多くがクリントン氏支持に傾いた理由である。

 こんな中で誰を支持するか世論調査で問われたら、「トランプ氏」とは答えにくくもなるだろう。有権者と新聞、テレビの間には溝があった。主要メディアが既得権益集団の一員と見なされていた面も否定できない。

 大手紙の一つUSAトゥデーは「世論調査の『レーダー』に捕捉されないまま、投票所に殺到したトランプ支持者の数を過小評価していたのではないか」と振り返っている。

 英国の欧州連合(EU)からの離脱問題では、英メディアは世論の動きを見誤った。日本のメディアも時に、報道姿勢を巡り国民の批判にさらされる。見る目は厳しさを増している。

 メディアは多様な意見があることを紹介し、議論の場を提供する役目を負っている。「フォーラム=公開討論会」の機能である。読者、視聴者から信用されないのでは役目は果たせない。社会的な共通理解をまとめる基盤が損なわれないか、心配だ。

 米国の新聞、テレビはいま、なぜ国民の考えを読み違えたのか検証する報道を続けている。関心を持って見守ろうと思う。

(11月15日)

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