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全農の改革 存在意義が問われる

 政府による改革の強制が、農家のためになるのか。協同組合である農協の存在意義に目を向けた慎重な議論が欠かせない。

 政府の規制改革推進会議の農業ワーキング・グループが示した提言である。

 農協の販売や流通を担う全国農業協同組合連合会(JA全農)に対し、1年以内の全面的な改革を求めている。推進会議は提言を受け、近く最終方針を示す。

 提言の中心は、手数料依存の見直しである。

 農薬などを農家に販売し、手数料を取る生産資材事業は大幅縮小する。農産物販売も手数料を取る委託販売を見直す。全農が全量を農家から買い取り、高い価格で販売することを促すという。

 流通コスト削減は農業の体質強化に必要だ。その多くを占める全農の改革は避けて通れない。

 問題は、自己改革が不徹底に終われば「第二全農」の設立を国が推進するべきだと明記していることだ。「不徹底」の判断基準も不明確で、事実上、政府の指示通りの改革を強制する内容である。

 中身にも問題が多い。農産物を全農が全量買い取ることになれば、売れ残りのリスクを抱える。競争力が低い地域の農産物を買い取り続けることができるのか。買い取り価格を抑え、農家の収入が低下する懸念もある。

 4月に施行された改正農協法は、全農の株式会社への転換も可能にした。今回の提言に株式会社化は盛り込まれなかったものの、農協を効率を重視した組織に転換する政府の狙いは明白だ。

 資材を安く農家に売り、農産物を有利な条件で販売することが全農の役割だ。一方で民間企業が進出しない中山間地でも生活資材やガソリンを販売し、農産物を委託販売の形で引き受けてきた。効率一辺倒では存在意義が薄れる。

 国内の肥料や農薬の価格は韓国の2〜3倍とされる。全農の自己改革が不十分だったことは否めない。7月の会見で中野吉実会長が「今までも良い形で運営してきた」と発言するなど、姿勢にも疑念がある。改革意識の乏しさが提言を招いたともいえる。

 輸入農産物の関税の多くを撤廃する環太平洋連携協定(TPP)の発効は見通せなくなっても、農業は高齢化などで崩壊の道を歩んでいる。根本的な改革が必要だ。

 全農は生産者を支える役割を本当に果たしてきたのか。協同組合の原点を見失わず、農家収入を増やす改革に自らの責任で取り組むべきだ。

(11月15日)

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