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憲法の岐路 衆参審査会 議論の土俵は整わず

 参院憲法審査会が実質審議を再開した。9カ月ぶりである。

 衆院の審査会はきょう17日再開の予定になっている。こちらは1年5カ月ぶりだ。昨年6月に参考人の憲法学者3人がそろって安保関連法を「違憲」と指摘して以来、衆院では審議を続けられなくなっていた。

 衆参両院で改憲に前向きな勢力が発議に必要な3分の2を確保してから初めての審議である。

 権力が暴走しないよう歯止めをかけるのが憲法の役割だ。憲法を尊重、擁護する義務を負う者として憲法が列挙する中には国会議員も入っている。

 これから大事になるのは、国民の意向を踏まえて慎重に議論を進めることだ。改憲に前のめりな安倍晋三首相の姿勢に引きずられてはならない。

 首相はこのごろ、改憲にあまり触れようとしない。少し前までは違っていた。

 1月の参院決算委では「いよいよ、どの条項を改正するかとの新たな現実的な段階に移ってきた」と熱意を示した。2月の民放ラジオ番組では「自衛隊の存在を明記すべきだ」と、9条改定を目指す姿勢を見せていた。

 改憲への意欲を語らない理由について、首相自身が先日の国会で述べている。自民党改憲草案を巡る野党議員への答弁だ。

 「改憲がリアリティーを帯び、衆参の憲法審で議論する段階になり、党総裁として(自民草案については)発言を控えた方がいいと判断した」

 改憲に向け、首相は満を持している。議論の加速を期待していることは間違いない。

 きのうの審査会では、自民の委員が「自主的な憲法改正は国政の重要課題だ」と述べた。首相の持論である“押しつけ憲法論”に通じる言い方である。

 これに対し民進の委員は、違憲との批判がある安保関連法を放置したままの改憲論議は「絶対に許されない」と反論。共産の委員は「改憲のために審査会を動かしてはならない」と主張した。

 改憲論議の土俵が整っていないことをあらためて浮き彫りにするやりとりだった。

 共同通信社が8〜9月に実施した世論調査では、安倍首相の下での改憲に55%が「反対」と答えていた。首相の姿勢に危うさを感じる国民が多いことを見据えた審議を与野党に求める。

(11月17日)

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