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対米関係 今後を慎重に見定めよ

 安倍晋三首相と米国の次期大統領のトランプ氏がニューヨークで初めて会談した。

 大統領選の最中、日本に対して厳しい発言を繰り返していたトランプ氏である。首相としては一刻も早く会って、真意を確認したかったのだろうか。

 首相は会談後、記者団に「ともに信頼関係を築く確信を持てる会談だった」と語った。

 来年1月に発足するトランプ政権の政策や陣容はまだはっきりしない段階である。首相の言葉を額面通りに受け止めることはできない。日米関係が今後どうなるか。予断を持つことなく、新政権と向き合う必要がある。

 会談はトランプ氏の自宅で行われた。大統領就任前であることなどから詳細な内容は非公開とされた。45分間の予定だった会談時間は倍になったという。日米間のさまざまな課題について意見を交わしたとみられる。

 トランプ氏は選挙戦で在日米軍の駐留経費負担増を日本に要求したり、経済分野では環太平洋連携協定(TPP)からの脱退を訴えたりした。「世界の警察官にはなれない」とも述べている。

 安倍政権は安保条約を柱とする日米の同盟関係を外交の基軸としている。トランプ氏の大統領選勝利には戸惑いを隠せなかったようだ。米国の力を背景に、北朝鮮や中国の動きを抑える戦略に狂いが生じると考えたのだろう。

 こうした不安が、トランプ氏と会うことを急がせたとみられる。会談では互いに友好をアピールした。ただ、駐留経費問題やTPPなどの懸案に関し、どこまで踏み込んだかは分からない。

 今回の会談については、一定の成果があったと評価する声が出ている。市場も反応し、ドル買いの安心感を生んだ。

 一方、他国に先駆けたトランプ詣でとの印象も与えた。今後、米新政権から足元を見られるのではないか、との批判が出た。

 例えば、集団的自衛権の行使を認めた安全保障法制を整えたことを理由に、自衛隊の役割拡大を求めてくることが考えられる。

 トランプ氏は以前、日本や韓国の核武装を容認するような発言をした。最近、「言っていない」と軌道修正を図る動きを見せた。大統領に就任すれば現実路線に転じるとの見方も出ている。

 楽観論に傾くのは危うい。今後の対米外交では、政権の中枢だけでなく、与党共和党や野党民主党など、きめ細かく対話の回路を整備しなくてはならない。

(11月19日)

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