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原発避難いじめ 差別をはびこらせるな

 いわれのない差別やいじめに苦しむ子どもと保護者の訴えを、学校も教育委員会も正面から受けとめようとはしなかった。その姿勢は厳しく批判されなければならない。

 原発事故が起きた福島県から横浜市へ両親と自主避難した男の子が転校先の小学校でいじめを受けた問題である。中学1年になった今も不登校が続いている。

 いじめは小2の転校直後に始まり、同級生から名前に「菌」を付けて呼ばれた。小5に進級した一昨年には、ゲームセンターなどで遊ぶ費用や食事代を払わされた。「賠償金があるだろ」と言われ、総額およそ150万円を家から持ち出している。

 学校は両親から相談を受け、同級生らに事情を聴いた県警からも連絡があった。なのに対応していない。内部調査で男の子が自分から渡したと判断し、いじめとは認識しなかった。市教委も「介入できない」との姿勢だった。

 「なんかいもせんせいに言(お)うとするとむしされてた」「いろんなはなしをしてきたけどしんようしてくれなかった。だからがっこうはだいっきらい」―。

 男の子は小6だった昨年、手記につづっている。子どもからこんな悲痛な叫びをぶつけられる学校とは、いったい誰のための場所なのかと思わされる。

 いじめを受けて自ら命を絶つ子が各地で絶えない。手記は、自分は死を選ばなかったことを伝えたいという男の子の強い意思で公表された。

 「なんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」。けい線をはみ出す力強い字に必死な思いがにじむ。

 両親がいじめ防止対策推進法に基づく調査を求め、市教委が第三者委員会に諮ったのは今年1月。男の子が不登校になって1年半余も過ぎてからだ。第三者委は報告書で、学校の対応を「教育の放棄に等しい」と非難している。

 それとともに見過ごせないのは、福島からの避難者を差別、排除する意識が社会に深く巣くっていることだ。それが子どもたちに投影されていないか。「放射能がうつる」などといじめられる事例は震災後、各地で相次いだ。

 お仕着せの対策ではなく、差別と排除をはびこらせないために大人がどう行動するかが問われている。子どもが生き生きと学び育つ権利をどうすれば守れるか。保護者や住民も関わり、教育の場で主体的な取り組みを起こしたい。

(11月19日)

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