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出張した都内で偶然入った喫茶店。後から隣の席に座った20〜30代の男女2人の会話に、思わず聞き耳を立ててしまった。「これでは法律違反になる」「それでも取引先の要請なら続けるしかないでしょう」

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1カ月前の出来事だ。企業の社会的責任も口にした2人は違反にどう対応したのか。消費者庁の3年前の調査では会社に告発すると4割が解雇など不利益を受ける恐れがあると回答。3割は嫌がらせを懸念した。告発者を守る制度ができて10年。社員にとってハードルはまだ高い

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制度発足後の2007年6月に上司の不正を会社に告発した浜田正晴さんは8年半も苦汁をなめさせられた。告発直後に配置転換。新入社員用の学習をさせられ1人だけの席で勤務した。訴訟に踏み切り12年6月に勝訴する。それでも待遇は改善せず再び提訴。今年2月に和解した

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制度は告発を理由とする解雇や降格を禁じる。問題は違反しても罰則がないことだ。消費者庁は見直しに向け議論中。違反した事業者名を公表する行政措置を導入する方向になったものの、罰則は「混乱をもたらす」として慎重だ

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埋もれた不正はどれほどあるのか。被害を受けた消費者もいるだろう。外部の指摘で発覚すれば会社の存続にも影響する。「通報は会社のためだ」と浜田さん。告発者への意趣返しは第二の不正だ。社会の厳しい姿勢が社員の勇気を生む。

(11月21日)

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