長野県のニュース

対ロ交渉 功を焦ってはいないか

 北方領土を巡るロシアとの交渉の難しさを改めて感じさせる。

 来月に訪日を控えるプーチン大統領が記者会見でロシアの主権を強調した。日本政府は発言の意図を見極めつつ、慎重に話し合いを重ねるべきだ。

 前日、安倍晋三首相とペルーで会談していた。会見でプーチン氏は、北方領土での共同経済活動を首相と協議したことも明らかにし実現に意欲を示した。

 ロシアの主権を認めることにつながるとして日本が拒否してきたものだ。菅義偉官房長官は、ロシア主権下での活動には応じられないとの認識を示した。

 プーチン氏は、北方領土について第2次大戦の結果、ロシア領になったとして「今はロシアの主権がある」と語った。北方四島の主権確認を求める日本の立場とは懸け離れている。

 ハードルの高さは会談後の首相の発言にもうかがえた。「解決への道筋が見えてはいるが、簡単ではない。着実に一歩一歩前進していきたい」と述べている。

 9月の首脳会談後には「新しいアプローチに基づく交渉を進めていく。手応えを強く感じ取ることができた」としていた。明らかにトーンダウンしている。

 菅氏もきのうの会見で「日ロ両首脳が話し合いをする中で一挙に解決できる、そんな生易しい問題ではない」と強調した。依然、主張の隔たりが大きいことを踏まえての予防線ではないか。

 プーチン氏は来月、首相の地元である山口県での会談に加え、東京で経済関係を中心に閣僚を交えた協議も行う。交渉の前進を目指す日本に対し、一層の経済協力を迫ってくるかもしれない。

 政府はペルーでの両首脳だけでの会談の具体的な内容を明らかにしていない。菅氏は「事柄の性質上、中身を紹介することは差し控えたい」とした。プーチン氏が公に語っていることをなぜ伏せる必要があるのか。やりとりの詳細を国民にきちんと説明すべきだ。

 次期米大統領に対ロ関係の改善を訴えるトランプ氏が選ばれたことで、日ロ関係も今後を見通しにくい面がある。

 ウクライナ問題でロシアと対立するオバマ政権は、日ロ関係の緊密化に懸念を示してきた。米ロが接近した場合、日本がロシアと交渉しやすくなる可能性の一方、ロシアにとって日本の重要度が下がることも考えられる。

 各国の動向も見定める必要がある。政権の実績をつくろうと性急に交渉を進めるときではない。

(11月22日)

最近の社説