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NHK受信料 値下げ見送りが映す混迷

 籾井勝人NHK会長が提案していた受信料の値下げを見送ることが、きのうの経営委員会で決まった。

 実務トップが打ち出した値下げ案を、視聴者の代弁者でもあるはずの経営委が退ける奇妙な構図である。経営委と籾井会長との間の溝を改めて浮き立たせる展開だ。

 籾井会長の任期は来年1月で切れる。次期会長を選ぶ権限は経営委にある。

 経営委は開かれた形で選任手続きを進めて、国民が納得できる結論を導いてもらいたい。

 NHKの経営は視聴者が払う受信料で支えられている。放送法にはNHKの業務について「営利を目的としてはならない」とする規定がある。必要以上の黒字が出たら内部にためておかず、受信料を値下げするのが筋である。

 「余ったお金は支払った視聴者に返すのが公平なやり方だと固く信じている」。先日開いた記者会見での会長の発言は、言葉の限りでは筋が通っている。

 NHKはいま東京・渋谷にある放送センターの建て替え計画を進めている。基本計画がまとまったのを受けて収支を見直したところ、年間受信料の3%に当たる200億円を減額できることが分かったという。1世帯あたりでは月額50円になる。

 テレビを持つ人はNHK番組を見る、見ないにかかわらず受信契約を結ぶ決まりになっている。受信料は税金に準じる負担である。値下げに努めるのは当然だ。

 問題は、値下げが会長の続投問題とリンクする可能性があることだ。値下げが実現すれば提案した会長として経営を引き続き担うのは当然、との見方が浮上しておかしくない。

 経営委は会長の姿勢に対する不信感から値下げを認めなかった、と受け止める人も多いだろう。

 籾井会長は就任以来、「政府が右と言っているものを左というわけにはいかない」「原発報道は住民の不安をかき立てないため、公式発表をベースに」など、報道の自主、自律をどこまで理解しているか疑わせる発言で批判を浴びてきた。

 先日は田島泰彦上智大教授(メディア法)、元経営委員の小林緑氏ら有識者が、籾井氏を続投させないよう求める要望書を経営委に出している。

 今度の問題で経営委と会長の溝はさらに深まった。籾井氏が会長にとどまり疎遠な関係が続くようでは、いい番組は作れない。視聴者の期待にも応えられない。

(11月23日)

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