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法曹への道 経済負担で志を摘むな

 弁護士などの法曹には、困っている人の気持ちがよく分かる人にこそなってほしい。

 それには、志ある若者が経済的負担で諦めることのないよう支援しなければならない。

 国が、司法試験合格後の修習期間中に支払っていた給費を打ち切り、返済義務のある貸与制にしたのは、逆行する対応だった。

 新制度に切り替わって5年。重い経済負担から法曹への道を断念する人が少なくない。将来の司法サービスの低下につながる問題だ。早急な改善を求める。

 司法修習は、司法試験合格者が弁護士、裁判官、検察官になるため約1年間受ける研修だ。裁判所、検察庁、弁護士事務所などで実務や素養を身に付ける。

 裁判所法に修習専念義務があり、アルバイトや副業は禁じられる。その代わり、国は月額20万円余を基準に給費を支払ってきた。

 転換したきっかけは2002年。法曹需要の大幅な増加を見込んで、司法試験合格者を段階的に3倍にし「年間3千人」を目指すと、政府が決めたことだ。

 合格者が急増すれば給費の予算がもたないと、11年、基本月額23万円(上限28万円)の貸与制に移行した。修習を終えて5年後から10年間で返済する必要がある。

 実際は法曹需要が見込み通り伸びず、政府は13年に「年間3千人」の計画を撤回した。少なくともこの時点で給費制に戻すべきだったのではないか。貸与制は既成事実化して今も続く。

 日弁連によると、修習生の平均借入額は約300万円に上る。

 中野市出身で13年に修習を終え、弁護士過疎地だった飯山市で開業した小川陽一さん(38)。修習先の裁判所の近くに借りる住居の家賃など320万円ほどの貸与を受けた。周囲には司法試験に受かりながら、返済を考慮して法曹を断念した人が複数いるという。

 特に深刻なのは、社会人から法曹に転身しようとする人たちだ。法曹界に社会人経験は貴重だ。だが、扶養家族がいれば1年間、無収入になるのは厳しく、諦める人もいる。

 司法試験合格者だけの問題ではない。重い経済負担を考え、法曹を目指す人そのものが大幅に減っている。法科大学院受験に必要な適性試験の受験者数は貸与制移行前の7200人余から昨年度はほぼ半減した。

 お金がないために有為な人材が法曹に就けなければ、ツケは国民に跳ね返る。努力すれば志が果たせる環境づくりを急ぐべきだ。

(11月24日)

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