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ポト派判決 排外主義に警鐘鳴らす

 1970年代後半に起きたカンボジア大虐殺を裁く特別法廷が、旧ポル・ポト政権の元最高幹部2被告に終身刑を言い渡した。

 虐殺や飢餓などで200万人近くの国民が死亡したとされる。なぜ、これほど多くの命が奪われたのか。誰が指示したのか。肝心な点に関し、裁判では明らかにならなかった。

 決して忘れてはならない暗黒の歴史だ。国際社会は法廷の場にとどめることなく、真相解明の努力を続けなくてはならない。

 特別法廷は国連とカンボジア政府が交渉を重ね、2004年に設置が決まった。カンボジアの国内法廷との位置付けではあるが、検察官や判事などは外国人とカンボジア人の双方が務める。国際法廷の性格が強いものだ。

 元最高幹部4人が人道に対する罪などで起訴されたのは6年前。高齢のために2被告が死亡し、ポト派のナンバー2とされたヌオン・チア被告と、国家元首の役割を担ったキュー・サムファン被告だけとなっていた。

 両被告は一審で最高刑の終身刑が言い渡されたが、控訴。二審は一審の量刑を適切と判断し、判決が確定した。

 両被告は法廷でポト派の指導理念に間違いはなかったと強弁し、責任を認めなかった。両被告に関しては、少数民族などに対する大量虐殺罪を審理する別の裁判も行われている。今後の審理の中で真相解明につながる新たな事実が出てくるのだろうか。

 ポト派政権が崩壊して今年で37年。最高指導者のポル・ポト元首相は裁きを受けないまま1998年に死亡している。

 気掛かりなのは、元幹部や当時を知る生存者の高齢化が進む中、カンボジア国内や国際社会の関心が薄れていくことだ。今回の判決がポト派の犯罪に一定の区切りを付けたことで、記憶の風化が加速することも考えられる。

 日本は90年代から内戦に揺れたカンボジアの和平や復興を積極的に支援してきた経緯がある。特別法廷には国際社会の支援総額の約3割を拠出し、最大の支援国となっている。判事や広報官を出すなど、人的貢献もしている。

 カンボジアの識者はポル・ポト派の思想は排外主義に起因するとし、「現代にも生き残っている」と警鐘を鳴らす。

 現代に通じる教訓をくみ取るためにも、多面的な検証が欠かせない。カンボジアの今後の取り組みを見守るとともに、日本も積極的に後押ししたい。

(11月25日)

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