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小林一茶は50歳の冬、江戸から故郷の柏原村(現信濃町)に帰る。1812(文化9)年のことだ。豪雪地の生活は難儀だったろう。初雪は長い冬の始まりだ。一茶がどう感じていたのか、分かる一文がある

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〈霜降月の始めより、白いものがちらちらすれば「悪いものが降る」「寒いものが降る」と口々にののしりて〉と書き、一句詠む。〈初雪をいまいましいといふべ哉(かな)〉旅人。晩年に書いた「俳諧寺記(はいかいじのき)」にある。信濃毎日新聞社刊「信濃の古典」から引いた

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初雪などをたたえ木ごとに花が咲くと興じる都人と、信濃人とは生き方が美意識の違いに現れている―。俳人宮坂静生さんは本紙で「俳諧寺記」に触れつつ書いた。〈雪行け雪行け都のたはけ待(まち)おらん〉も一茶の句。初雪よ都へ飛んでいけ、風流人が今か今かと待っているぞ―という

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きのうの都心の初雪は、11月としては観測史上初めて積雪を確認した。子どもたちは喜んでいたが、交通機関の乱れで通勤、通学に影響した。近年は大雪も珍しくない。そのたびに日常生活が混乱してけが人も出る。雪にもろい都心では風情も楽しめまい

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雪が題材の一茶作品は多い。研究者の矢羽(やば)勝幸さんが2年前の本紙連載「四季の一茶」で取り上げた一句。〈はつ雪や駕をかく人駕の人〉。「駕」はただしくは「駕籠(かご)」。初雪の日、人の境遇は実にさまざまだと詠んだ。晩年の作という。

(11月25日)

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